AERA 2024年9月16日号より

年金額が増える見通し

「ざっくり言って『男性はほとんど減らない、女性は増える』と概観できます」(高橋氏)

 経済前提がもっといい場合は、平均年金額は男女とも若年世代になるにつれよりはっきりと上昇していく。

 また、世代ごとの年金額の分布をみると、若年世代になるほど男女とも月額10万円未満の低年金者が減っていくことがわかる(グラフ)。特に女性では「10万~15万円」の層と「15万~20万円」の層が急激に増えるなど、男性より年金額の上昇が顕著に表れている。

 平均年金額や年金額の分布がこのような結果になるのは、長く働いて厚生年金への加入期間が延びるからにほかならない。加入期間が延びると名目の年金額は増える。マクロ経済スライドが行われていて、その分年金額が少なくなったとしても、増えたところからの減少だからマイナスの影響を緩和できる。

 先の日本総研の高橋氏は、こうした効果を年金額の見通しに組み込めたことが「画期的」とする。

「モデル年金では就労期間が20歳から60歳までの40年間に固定されていました。その中でマクロ経済スライドを実施するのですから、所得代替率が下がるのは当たり前です。しかし現実は違っていて、人々は60歳を過ぎても就労するなどより長く働くようになっています。これまでより長く働く分や40年を超えて働く分を年金額の見通しに組み込めれば、減少部分をどんどん補えます。分布推計は、その効果を目に見えて理解できるようにしてくれました」

 そして、それが冒頭の年金不信を払拭する可能性につながればと期待する。

「所得代替率が下がっていくモデル年金の図ばかりを示されてきたので、若い世代で年金不信に陥る人が増えてしまいました。そんな人々にこの結果を示せば、『年金は減るばかりではないんだ』ということに気づいてくれるのではないでしょうか」(高橋氏)

将来の備えにも使える

 もちろん、いいことずくめではない。女性の年金額が大きく増えることばかりが注目されているが、ニッセイ基礎研准主任研究員の坊美生子さんによると、女性の低年金は若年世代になっても変わらず続きそうだという。

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若い世代は分布推計を活用して、将来の備えを