ナチュラルサイエンス代表取締役:小松令以子さん(こまつ・れいこ)/1961年生まれ、東京都出身。自分も子どもも肌が弱く、次男のアトピー性皮膚炎発症をきっかけに低刺激石鹼の開発を始める。96年に「ナチュラルサイエンス」を設立(写真:篠塚ようこ)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年9月16日号にはナチュラルサイエンス 代表取締役 小松令以子さんが登場した。

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 肌に悩みを抱える人たちが安心して使える製品を作ろうと、医療機関や専門医と連携しながら30年以上、スキンケアの研究を続けてきた。新生児から使えるスキンケアブランド「ママ&キッズ」のベビーラインは全国600カ所以上の産院で導入されている。

 きっかけは生後6カ月を過ぎた次男がアトピー性皮膚炎を発症したことだった。数十カ所の医療機関を受診したものの症状は全く改善せず、頭を抱えていた。

 助けを求めて訪れた国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の皮膚科医に「アトピーは皮膚の病気。スキンケアでしっかり保湿して治していくことが大事」と教わった。

「当時はアトピーの対処法として食事療法が一般的で、今のようにスキンケアは重視されていませんでした。先生の教えで希望が見えた気がしました」

 早速市販の石けんや保湿剤を探したが、子どもに使いたいと思えるものは見つからなかった。

 ないなら自分で作ろうと、皮膚科医らにアドバイスをもらいながら低刺激の石けんの研究、開発を始めた。大学で化学を学んだ後、企業で化粧品などの技術開発に携わっていた経験が役に立った。

 できあがった石けんを同じ悩みを持つ人に使ってもらおうと、前身の会社を設立。ただ、そう簡単に売れるわけはなかった。

 百貨店などでスペースを借りて販売し、買ってくれた人の口コミで次第に広く知られるようになっていった。

「今思えばとても無謀な挑戦ですよね。アトピーに悩む人に届けたいという思いだけで突っ走っていました。共感してくれた人たちに感謝です」

 石けんのほかに、保湿剤などのスキンケア製品を少しずつ展開し、1996年に現在の会社を設立。自社工場も稼働させ、通信販売などで売り上げを伸ばしていった。

 アトピー性皮膚炎の患者は近年も増加傾向だ。少しでも役に立てればと、スキンケアのアドバイスをするセミナーで全国各地を回る。

「小学生がお礼の手紙をくれたり、肌荒れに悩んでいた親子が、肌がこんなにきれいになったと報告してくれたりするのが、本当にうれしい。これからもエビデンスに基づく高品質な製品を作り続けます」

(ライター・浴野朝香)

AERA 2024年9月16日号