斎藤氏のポスター貼りを手伝った盛山文科相

 上脇教授はこう話す。

「刑事告発は残念ながら不起訴となりました。労務者報酬の労務とは、選挙のポスター貼りだと思われます。支出を受けた者の中には、盛山氏はじめ県議や市議がポスター貼りでカネをもらっていることは、選挙運動無報酬の原則から逸脱した支出。一連の告発文書の問題も報道で知っていますが、斎藤知事が法を無視した選挙戦を展開していたと感じます」

「自民党の言うことばかり聞けない」

 21年の兵庫知事選では、井戸敏三前知事が退任を表明し、県議会の自民党会派は当時の副知事への立候補要請を決めた。ところが一部の県議が会派を離脱して、維新が推す斎藤氏の支援を決める。当時の菅義偉首相が維新と関係が深かったこともあり、自民党は元副知事から乗り換えて斎藤氏を推薦。だが、一部の自民県議は元副知事を支援し続け、自民分裂の選挙となった。

 自民党のC県会議員によれば、選挙中から斎藤氏と自民党の間には溝があったという。

「斎藤知事は自民党から何か指摘や指示があるたびに『維新の推薦も受けているので自民党の言うことばかりは聞けない』と反論することがあった。渡海氏や山口氏は分裂選挙という危機感もあって、『斎藤、何を言うてんや。どれだけ選挙にカネがかかっているのかわかっているのか』と斎藤知事を怒鳴りつけ、周囲が凍り付いたこともある。2人は大臣経験者で地元ではお偉い大先生です。それでも斎藤知事は自説を曲げずに険悪になっていた」

 そして、C県議はこう続ける。

「本来、カネを出して当選させた自民党が強硬に斎藤知事に言えば辞職させられるはず。だが、言ったところで斎藤知事が『維新の推薦』を持ち出し、粘るのは目に見えている。辞任を迫ったはいいが斎藤知事に突っぱねられたら格好悪いでしょう。だから、動けない」

 斎藤知事を当選させた自民党には、知事の疑惑に大きな責任がある。自民党が「引導」を渡す日はくるのだろうか。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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