ロンドンの高校生リア(プリヤ・カンサラ)の夢はスタントウーマン。唯一の理解者は姉リーナ(リトゥ・アリヤ)だ。だが姉が富豪の息子と結婚すると言い出す。相手に不審を感じたリアが調査をすると──。パキスタン系イギリス人のニダ・マンズール監督が放つ、痛快シスターフッドムービー「ポライト・ソサエティ」。俳優のプリヤ・カンサラさんに本作の見どころを聞いた。
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脚本を読んだときにめちゃめちゃ笑ったんです。こんな映画、見たことがない!って。リアのキャラクターにも惚れ込みました。愛すべきところもあって強くて同時にゆるいところもある。リアのバックグラウンドにも共感できました。私はインドにルーツを持つイギリス人です。南インド的なコミュニティーの価値観を理解できる半面、息苦しいなと思うときもあります。父権主義的だし、人前ではこう振る舞うべきといった作法を押しつけられがちなのです。それにリアが感じている怒りは全ての女性の怒りなんですよね。新しい世代が今までの価値観に挑戦状を突きつける。この映画のそういうところが好きですし、いま現実に起きていることだと思います。
ニダ・マンズール監督と仕事ができて夢のようです。傑出した才能の持ち主ですし、イギリスで創作をするほぼ唯一の南アジア系の女性として、監督も孤独を感じてきたのだと思います。いま彼女を友人と呼べることに感謝しています。
私は4歳から演技が好きでした。でも俳優一本でやっていけると思えたのは3年半ほど前からです。子どものころハリウッド映画やイギリスのテレビ番組を見ていても自分のような姿をしたヒーローが全然出てこなかったんです。それでは大人になった時に自分にもその価値があるとイメージできません。リアのようにイケてる主人公に早くに出会っていたらより早くに自信を持てたかも、と思います。
女性活躍への道はまだまだ長いでしょう。ずっと闘っていると時には疲れることもある。それでも覚えていてほしいのは、自分が思っているよりあなたには力があるんだということ。それになによりも私たちは一人じゃない。男性に頼れなくても女性たちがいるじゃないか!と叫びたいです(笑)。
(取材/文・中村千晶)
※AERA 2024年9月9日号