筑波大学附属高校の入学式を前に、新生活への抱負を語る悠仁さま=2022年4月9日、東京都文京区
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 お茶の水女子大学附属小学校、同中学校から筑波大学附属高校と、一貫して学習院以外に進学するという、皇族としては異例の選択をしている悠仁さま。現在高3で、東大進学も噂されている。その進路に国民の関心は高い。政治学者・原武史さんはどう見るのか。AERA 2024年9月9日号より。

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 秋篠宮家の悠仁親王の「東大進学問題」ですが、一般入試で受験して合格すれば何の問題もないでしょう。しかし一般市民が中に入れない赤坂御用地をフィールドにした「トンボ論文」による推薦入学ですと、一般の高校生と条件が異なるうえに共同の論文ですから、本当の実力が分かりづらくなる恐れがあると思います。

 トンボに関心をもつ悠仁親王が学びたい分野は大学では農学部でしょうが、東大に農学部はあっても学習院にはない。だから東大を受験すること自体は不自然ではありません。

 近現代の皇室では、昭和天皇、現上皇、秋篠宮と3代にわたり、生物学の研究をしてきました。昭和天皇はヒドロ虫類と呼ばれる小さなクラゲと粘菌(変形菌)と植物の研究で知られています。現上皇はハゼ。秋篠宮はナマズです。だからトンボの研究も唐突な話だとは思いません。

 東京都の立川に「昭和天皇記念館」があり、皇居内の生物学御研究所にある昭和天皇の研究室が忠実に復元されています。そこには愛用していた顕微鏡や書架、小さな水槽、植物標本などが展示され、天皇の研究が本格的だったことがわかります。

 今回の進学問題の背景には、昭和天皇から代々続いてきた生物学者としての学統を受け継がせたいという秋篠宮の思いを感じます。そういう意味では、むしろ現天皇が研究しているイギリスの海上交通史、運河研究の方が異端と言えます。

 昭和天皇には幼少期に滞在した沼津御用邸近くの海に打ち上げられた生物を拾った体験があり、東宮御学問所で生物を教えた東京帝大講師の服部広太郎の影響も受けました。つまり昭和天皇も間接的に東大と関係があるわけです。天皇自身、新種を発見し、海外でも高く評価されています。

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