損保ジャパン広報部に事実確認をしたところ、「BM社の案件を集中対応するチームは存在していたが、参加している担当者はBM社以外の工場も担当しており、専属ではない 」と回答があった。しかし、Aさんから提供された内部資料(※下記写真)には、「BM社専任担当者を配置」と明記されている。

Aさんから提供された、BM社に対する保険金査定のフローがまとめられた内部資料。「BM社におけるプレゼンスアップにつなげるため、画像伝送損害調査集中対応の体制を確立します」という一文があるが、「画像伝送損害調査集中対応の体制」とは、全国のBM社工場に対する査定業務は本社のBM社専任チームに集約することを指すという

BM社案件についての「暗黙の了解」

 さて、顧客に査定結果を伝えるのは、もともと事案を受けた担当者のため、査定金額は本社から各事業所に送られてくる。だが、車の損傷内容に対して査定金額が明らかに高いケースが続出しており、Aさんふくめ現場は、「本社の査定は形ばかりで、BM社から届いた見積額をそのまま認定している」と感じていた。

「『ほかの工場でこの金額だったら、調査が必要なのに』と、みんなが思っていました。各事業所でBM社以外の査定を行うときは、たとえ簡易査定の対象企業であっても、1件1件ちゃんと写真を見て、少しでもおかしいなと思ったら工場に確認の電話を入れたり、整備士資格を持つスタッフが実物を見に行ったりします。でもBM社案件については、本社から査定金額が届いたら、問答無用で右から左に流すのが暗黙の了解になっていました」

 “BM社案件はスルー”という異様な運用の背景には、「現場の余裕のなさ」があったという。

「担当者一人ひとりが抱える案件の量が、めちゃくちゃ多いんです。特にここ数年は、業務をデジタルシフトする過渡期にあって、システム整備が追いついていないのにスタッフは減らされるばかり。そんななか、本社が出した査定額まで一つひとつ精査していたら、自分たちの首を絞めることになる。金額が妥当かどうかは別にして、ぱぱっと保険金を払って、手持ちの事案を1個でも早く処理したいというのが、現場の心情としては少なからずあります」

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社内調査に、現場は「今さらかよ」