永岡里菜さん(34)(ながおか・りな)/1990年、三重県生まれ。千葉大学教育学部卒。東京のイベント企画・制作会社でディレクターとして勤務。2017年にベンチャー企業へ移り、和食を普及させる取り組みを農林水産省とともに担う。18年に「おてつたび」を設立
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 歴史に名を残した「カリスマ」と呼ばれる経営者たちの名言や格言。その言葉は色あせることなく、多くの人々の心をつかんでいる。どこに魅力があるのか。ベンチャー企業「おてつたび」の永岡里菜代表取締役CEOに聞いた。AERA 2024年9月2日号より。

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「創業当初は好きな言葉と出合うたび、自宅に設置したホワイトボードに次々書き連ね、それを見て自分を勇気づけてから出勤していました」

 こう振り返るのは、2018年創業のベンチャー企業「おてつたび」(東京都渋谷区)の永岡里菜代表取締役CEO(34)だ。

 同社が手掛けるのは、人手不足で困っている地方の宿泊施設や農家に人を送り、最短1泊2日から最長2カ月ほど手伝ってもらうマッチングサービス。社名は「お手伝い」と「旅」の造語だ。「知らない地域に行きたい」と考えている旅行者を、「誰かに手伝ってほしい」と思っている人とつなぐことで、有名な観光スポットもなく、なかなか陽の当たらない地域のファン(関係人口)を増やすことにも寄与できる。地域の人手不足や魅力発掘といった社会課題と誠実に向き合う姿勢や、独自のビジネスコンセプトが高く評価され、創業以来、多くのビジネスコンテストで受賞を重ねてきた。そんな時代の先端をはしる起業家の永岡さんが大切にしてきたのが「言葉の力」だ。

「『おてつたび』という社名も、昔からあった『住み込みバイト』や『出稼ぎ』『季節労働』といった言葉をリブランディングしたいと考えて命名しました。言葉ひとつで見え方も価値観もがらりと変わります」

 大所高所からの決断を強いられる経営者は孤独に陥りやすい。タフであり続けるためには、「言葉」というエネルギー源が必要だ。永岡さんも創業当初、歴史に名を残す実業家らの本を読みあさる時期があったという。

「どれだけ有名なカリスマ経営者も最初は何者でもなく、トライ・アンド・エラーを繰り返した末に揺るぎない業績を築きました。そんな経営者の軌跡や節々に発した言葉に接することで、苦しい時も大志を抱き続けるパワーを得たかったのだと思います」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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