笑福亭鶴瓶がゲストと素敵な家族を求めて日本中をめぐる「鶴瓶の家族に乾杯」。演出はせず、ぶっつけ本番がモットーという番組だが、取材対象や取材姿勢に対する配慮などその裏にはさまざまな苦労もあるようで……。
いちばん大事にしているのは「ぶっつけ本番」であることです。ゲストも地元で出会った方も、より自然な素の姿が出るからです。ロケのスタート地点は我々が決めますが、そこからは鶴瓶さんとゲストに好きなように動いてもらいます。本当に演出はしていません。鶴瓶さんは、「何も決めずにやるから面白いことが起きるんや」とよく言っています。
現場の流れが優先なので、「あっちに行くとこういう店がありますよ」とゲストに町の情報を教えることもしません。もしラーメンを食べたいなら、「どこかおいしい店はありませんか?」と自分で地元の人に聞いてもらいます。出会いがつながっていくなかで起きるハプニングも大切にしています。面白いことだけを詰め込むというより、ゆっくり回って面白いことに出合う。そこにたどり着くまでの過程をきちんと見せたいと思っています。
この番組の主(あるじ)は鶴瓶さんです。我々は鶴瓶さんのあとについて行く感じです。それでカメラが記録した素材を、ディレクターが番組として楽しんでいただけるように初めて演出するわけです。
●ゲストが決まらない!? 日程調整に苦慮
スケジュールを組むのは大変です。まず鶴瓶さんの日程をいただいて、放送日、ロケ日、スタジオ収録日という一つのパッケージを作ります。このパッケージでゲストと交渉します。20年近く続く番組なので、出てみたいというお声もいただきますが、多忙な鶴瓶さんとスケジュールが合わなくてお断りすることもあります。ロケは放送の2か月から1か月半前です。ロケの2週間前までゲストが決まらないと現場はドキドキですね。
ゲストが決まったら、行ってみたいところ、休みになったらやりたいこと、気になっているものなどを1時間ぐらいで取材します。ゲストのお話をもとに番組でまだ訪ねていない町の中から候補地を絞り、担当ディレクターが1泊2日で下見に行きます。ゲストが旅したらどんな展開になるか、イメージを膨らませて帰ってきます。先日出ていただいた加藤茶さんは書道に興味があるということだったので、筆の産地である愛知県豊橋市にしました。