民主党の副大統領候補は「タンポン・ティム」、共和党は「田舎者の哀歌」。両党の副大統領候補は知るうえでキーワードになる言葉だ。2人はどんな人物なのか。AERA 2024年9月2日号より。
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8月20日夜(米中部時間、以下同)、米ウィスコンシン州ミルウォーキーで1万5千人が集まった民主党の選挙集会。副大統領候補に選ばれたティム・ウォルズ・ミネソタ州知事(60)は、大統領候補のカマラ・ハリス副大統領が演説する後ろで、両手を前で合わせて立っている。何をするのかと見ていると、ハリス氏が決めゼリフを言うと、誰よりも早く拍手を始める。観衆はそれに続いて拍手と歓声をあげる。この晩、彼は一言も発することなく、ハリス氏の後ろを歩いてステージから去った。
「パパみたいな人物」
ドナルド・トランプ共和党大統領候補を含め、共和党幹部がウォルズ氏につけたあだ名が「タンポン・ティム」。ウォルズ氏は昨年5月、小学4年生以上の公立校の児童・生徒が必要な場合に生理用品を無料で提供する法に州知事として署名した。副大統領候補に抜擢(ばってき)された途端、共和党がこの法を非難。「トランスジェンダーの生徒のために、必要となれば男子トイレにもタンポンなどを置く」とする法が、共和党支持者の神経を逆なでした。彼らは、LGBTQなど性的少数者を毛嫌いしている。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、同法は緩い適用で、ミネソタ州教育局は公立校が順守しているか調査をするつもりはないという。しかし、両親に月経が始まったことを言えない、あるいは経済的な理由で生理用品に手が届かない生徒が増えていることを背景に、同州民主党議員らが生徒らとともに法案を後押しした。
8月19日から始まった民主党大会で支持者に聞くと、ウォルズ氏は「パパみたいな人物。ハグしたい!」と評される人気者だ。人口400人の街の貧しい家庭で育ち、教師兼フットボールチームのコーチだったという中間層の代表だからでもある。教師だった父親が急逝し母子家庭となった。17歳で陸軍州兵になったことで学費を得て大学を卒業。結婚後、ミネソタ州の高校で地理教師となる。そこで負け続けていたフットボールチームのコーチ陣に加わり、3年後に州の選手権優勝に導いた。