●「後追い」の意欲なき報道番組にテレビ記者の驕りが見えた
テレビは『週刊文春』から野次馬精神を学べと言いたくなるほど、年明けから同誌のスクープや先行記事がニュースを席捲している。SMAP解散騒動、元野球選手の清原和博の薬物汚染、ベッキーの不倫疑惑……。極めつけは安倍政権の重要閣僚、甘利明経済再生・TPP担当大臣の口利き疑惑だ。発売前日の1月20日からテレビ各社が報道を始めたが、映像素材は文春記事をなぞったものや甘利氏ら閣僚の会見、国会審議のみ。
当初の段階で疑惑が本当かどうかを検証する「後追い」報道の姿勢を見せたのはテレビ朝日「報道ステーション」だけだった。同番組は告発者・一色武氏の自宅を何度も訪ね(結局、会えずじまいだったが)、国交省やURなどの反応も原稿に書き込み、告発者と甘利大臣が一緒に写った写真も入手(同じ写真はTBSテレビも入手)し、自ら検証していく姿勢が顕著だった(1月20、21、25、26日放送)。ただ多くの記事を引用しながら『週刊文春』と明示せず、同誌が抗議した。
週刊誌は足で稼ぐ。後追いでも気にせずに取材を重ねる。告発者の単独インタビューをテレビで初取材したのはTBSで、2月5日の「Nスタ」で放送した。他の民放やNHKは自ら検証せず、1月28日に行われた甘利氏の記者会見を「待つ」だけで、報道機関として手抜きの印象を与えた。後追いでも現場を踏むことで見えることは多い。TBSは見事な後追い取材で、告発者に甘利氏会見への反論も言わせた。後追い取材は屈辱的だが、初めから後追いをしないという社には、週刊誌への侮蔑とテレビ記者の驕り、怠慢が見える。