2024年、夏。今年も甲子園で高校球児たちの熱戦が繰り広げられている。第106回全国高校野球選手権大会の名シーン、名勝負を振り返る。今回は、8月16日の青森山田(青森)-石橋(栃木)について。
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三塁側アルプスは、この日もオレンジ一色に染まった。栃木県内有数の進学校を後押しする声援が、甲子園球場に広がる。
一瞬、その声がため息に変わったのは1回裏だ。今春のセンバツ8強にして東北を代表する青森山田の強打が甲子園の空気を変える。石橋のエースナンバーを背負う柳田瑛太は「3回無失点」を目指して先発マウンドに上がった。
「甲子園初マウンドに緊張しましたが、ブルペンでは調子がよかった」
2死二塁とピンチを背負った柳田は、青森山田の4番・原田純希にバックスクリーン横へ飛び込む特大の2ランアーチを浴びる。
「打たれたのはストレート。球自体は悪くなかったと思いますが、青森山田さんは全員が4番バッターのようだった。甘い球は投げられない。そう思うあまりにボール球が先行する場面もあった」
2回裏、先頭打者にストレートの四球を与えたところで降板。背番号6ながら投打の大黒柱である入江祥太にマウンドを譲った。
初戦で甲子園初勝利を挙げて勢いづく石橋との対戦に「どうしても先取点が欲しかった」とは青森山田の兜森崇朗監督だ。早い段階で主導権を握って「勢い」を止めることが、勝利の条件だと踏んでいた。オレンジに染まる三塁側アルプスの光景が目に入り「1死満塁で得点できなかった5回裏の攻撃では嫌な感じがした」。だからこそ「6回裏と7回裏に追加点を挙げられたのは大きかった」とも言うのだ。