笑っていたのは息子じゃなくて、たまたま居合わせたラジオリスナーだった。不思議なもので、あれほど取り乱していた自分がスーッと冷静になっていく。
「どうしたんですか?」
「いやぁ、ナマコのようなモノを踏んづけたら、何か出てきましてね。足にまとわりついてきたものを爪でこそぎ落としているんですよ。貴方も気をつけて」
「そうですか……握手してもらっていいですか?」
「もちろん。あ、左手ですいません」
右手はガリガリしながら左手でガッチリと握手。
「ありがとうございます。頑張ってください!」
何を頑張るのかはわからないが、笑顔で別れる。息子はもう先にシャワーを浴びて帰っていったようだ。
暑い。西陽が背中を焼きつける。やっぱり沖縄の日差しと家族は私を甘やかさない。
そしてナマコも。なんで、私はあそこでナマコを避けなかったのだろう。ナマコ汁以外のなにかステキなモノが出るかと思ったのだろうか?
今でもわからない。みんな暑さのせいだろうか?