鹿児島県訪問を終え、鹿児島空港に到着した両陛下=10月8日、鹿児島県霧島市
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 皇族方は、公務などのために地方や海外を訪問する機会も少なくない。訪れた先で人々とふれあった「あのとき」を振り返る(この記事は「AERA dot.」に2023年10月15日に掲載した記事の再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

【写真】雅子さまも「焼き芋がおいしい」と会話がはずんだ視察の様子はこちら

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 コロナ禍で延期されていた国体の開会式に出席するため、天皇、皇后両陛下が10月7日、鹿児島県を訪問した。翌日には県の特産物であるサツマイモの加工会社を視察。そこは、若手社員らも交えた、あたたかい交流の場になった。
 

「ええと、『この~木、なんの木』に出てくる木です……」 

 サツマイモの生産・加工を手がける鹿屋市の南橋商事の矢羽田(やはた)竜作社長(45)は、とっさにCMソングの一節を歌った。

 というのも、天皇陛下が休憩室に置かれた一枚板のテーブルを気に入り、「すごくよかったです。材質は?」とたずねてきたのだ。

 しかし、名前が出てこない。あせった矢羽田さんは思わず「CMで有名な木です」と歌ったのだ。答えは、モンキーポッド(アメリカネムノキ)。野生のサルが実を好んで食べたことが名前の由来だといわれる。

 幸い、すぐに雅子さまが答えに気づいてくれた。

「ああ!」

 おふたりは顔を見合わせると、

「あの木なんですね」

 と笑った。
 

 南橋商事は、平均年齢20代後半の社員9人と規模は小さいが、数年前から香港など海外にサツマイモを輸出するなどして成功し、県内でも勢いのある会社だ。

 おふたりには畑で芋の収穫作業を見てもらう予定だったが、外は激しい雨と風。視察はサツマイモの貯蔵庫に変更された。

 矢羽田さんは、県の特産品であるサツマイモの品種について説明。そのなかで、陛下らしいやりとりがあった。
 

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「芋は焼酎以外に何に?」と天皇陛下