サツマイモの生産・加工会社を視察する天皇、皇后両陛下。天皇陛下は「子どもの頃に、芋ほりを体験しました」と振り返った=10月8日、鹿児島県鹿屋市

 若い社員との懇談では、ざっくばらんな会話が続いた。

 26歳の牧谷滉平さんは、同社の主力である九州の新品種「紅はるか」について話した。すでに入社7年のキャリアがあると聞いた雅子さまは、すこし驚いた表情を見せ、説明を受けた。

 皮が見事なほど紅色で、これまでの芋よりも「はるか」においしいことから、この名前がつけられたという「紅はるか」。

 牧谷さんは同社で働く前は「紅はるか」も知らなかったし、焼き芋もそうおいしいと感じたことはなかったものの、「紅はるか」の魅力を知った今は、おいしい芋や焼き芋を作るこの仕事が楽しい、と伝えた。 

 雅子さまは牧谷さんの話にうなずくと、にっこりと笑った。

「紅はるかは、焼き芋にするとすごくおいしいですよね」
 

わあ、と手をたたいて祝福

 牧谷さんはおふたりとのやりとりを、こう振り返る。

「これまでは皇室を意識したこともほとんどなかった。今回お話する機会があると聞いて、ガチガチに緊張してしゃべれないと思っていた。でも実際にお会いすると、想像していたよりもリラックスしてお話できたことに驚きました」

 くだけた会話も織り交ぜられたおふたりの気遣いに、若い従業員の緊張もほぐれたようだ。

 おふたりは「休憩室をお借りしました。ありがとうございました」と何度もお礼を口にし、視察を終えた。

 矢羽田さんは視察の終わりに、おふたりに3人目の子どもを妊娠中の妻を紹介。おふたりは驚いた表情を見せ、「わぁっ」と手をたたいて祝福してくれたという。

「動きますか」

 そう話しながら、優しい目で妻のおなかを見つめる雅子さまが印象的だったという。
 

鹿児島県訪問を終えた天皇、皇后両陛下。鹿児島空港では、見送りに来た人たちに笑顔で手を振った=10月8日、鹿児島県霧島市

 秋は全国各地で行事が続き、皇室の公務ラッシュとなる季節。温かな触れ合いが、また生まれそうだ。

(AERA dot.編集部・永井貴子)