甲西の安富(右)が右翼線にサヨナラ二塁打を放ち歓喜のガッツポーズ。左は東北の投手・佐々木

 奥村二盗のあと、石躍の一塁への当たりを一塁手が後逸。右翼前に転がる打球を見ながら奥村は三塁を蹴って本塁を突いて同点。

「ホームを踏んで勝ったと思いました。こっちに試合の流れが来ていると確信しました」

 2死二塁となって、右打ちの名人、6番・安富が打席へ。

 1ボールからの2球目、高めの直球を思いきりたたくと打球は右翼線ぎりぎりに飛んだ。ベンチにいた選手たちが飛び出した。もみくちゃにされる、逆転サヨナラのホームを踏んだ石躍と殊勲の安富。

 勝利の瞬間、地元では甲西高校の近くで花火が1発打ち上げられた。

 奥村監督は試合後、「胃が痛くなったけれど、 最後に治りました」とコメントした。

 この大会、ベスト4まで勝ち進んだ甲西。その活躍は「ミラクル甲西」「甲西旋風」などとたたえられた。公立校の快進撃は全国の球児に夢を与えた。

「全員が一球に集中していたチームでした。勝ちたいという気持ちも強かった。それと練習環境は創部したばかりで整ってはいなかったけど、学年の壁がなく、ひとつのチームとして団結、協力していました。自分たちの力を発揮しやすい野球環境だったのが結果につながったのでしょう」

 奥村伸一は近畿大を経て、社会人野球のプリンスホテル、田村コピーで活躍。母校・甲西の監督も務めた。現在は滋賀の地元企業・サンエーの代表取締役を務める。

第67回準々決勝 甲西(滋賀)vs.東北(宮城)
東 北 000 300 011 5
甲 西 101 001 102X 6

(内山賢一)

※AERA増刊「甲子園2024」から