床にモノを広げていたキッチンラック周辺/ビフォー

 小さな範囲でもコツコツと片づけを進めると、少しずつ家の中はきれいになっていきます。夫も満帆さんが変わろうとしていることを知り、片づけを手伝ってくれるようになりました。

「大きな段ボールゴミを捨てに行ってくれたり、『ここはこうした方がいいんじゃない?』とアイデアをくれたり。今までも仲良く暮らしていましたが、家のことを話し合ってさらにコミュニケーションが増えた感じがしました」

 片づけの途中、満帆さんはあとでフリマアプリを使って手放そうと不用品をまとめておいたことがあります。でも、フリマアプリを使ったことがなかったので、まずはアプリを入れるところから始めないといけません。さらに、使い方を調べて出品や発送の手間も考えると面倒に思えて後回しになり、結局ずっと置きっぱなしになっていました。

「他の人がフリマアプリを活用していたので自分もやってみようと思ったんですが、プロジェクト中に指摘されて自分には合っていない方法だと気づきました! フリマアプリをやっている知り合いに頼んで出品してもらったり、リサイクルショップに持って行ったり、すぐに手放せる方が自分には合っていましたね」

 家の中がきれいになるころには、満帆さんは自分の変化も感じていました。

「今までは自己肯定感が低くて、何か理由をつけてあきらめることが多かったんです。でも、それは本当にもったいないなと思うようになりました。私の場合、一歩踏み出してみたら、家がきれいになったし、夫が料理をしてくれたら素直に『ありがとう』と思えるようになりました」

 さらに、満帆さんは発想の転換も大事だと話してくれました。

「フリマアプリもそうですが、やり方を変えてみると自分にぴったりの方法が見つかることがありますよね。例えば、今までなんとなく置いていたタオルの位置を変えたら、すごく使いやすくなったんです。こういう学びは、仕事でも活用していこうと思いました」

床が広くなって移動もスムーズに/アフター

 満帆さんの最終目標は、引っ越しとのこと。今まで片づけができなかったので、引っ越しどころではなかったそうです。

「今は仕事が忙しくても物件探しをする余裕ができました! 家の中もまだブラッシュアップしながら、次の引っ越し先を見つけたいですね」

 満帆さんは、“誰か”の片づけ方ではなく、“自分に合った”片づけ方を身につけられました。一度身についてしまえば、場所が変わっても大丈夫。今後引っ越しても、新しい家をきれいに片づけられるでしょう。

 自分ではない誰かが、自分の家ではない場所で成功した片づけ方が、自分に合っているとは限りません。満帆さんのように自分に合った片づけ方を見つけて、自信を持てる方が増えてくれるといいなと願っています。

著者プロフィールを見る
西崎彩智

西崎彩智

西崎彩智(にしざき・さち)/1967年生まれ。お片づけ習慣化コンサルタント、Homeport 代表取締役。片づけ・自分の人生・家族間コミュニケーションを軸に、ママたちが自分らしくご機嫌な毎日を送るための「家庭力アッププロジェクト?」や、子どもたちが片づけを通して”生きる力”を養える「親子deお片づけ」を主宰。NHKカルチャー講師。「片づけを教育に」と学校、塾等で講演・授業を展開中。テレビ、ラジオ出演ほか、メディア掲載多数。公式サイトはこちら

西崎彩智の記事一覧はこちら