第4のプロセスでは、収集した情報をもとに避難場所を決めて移動する。

 外出先にいる場合、判断基準はこうだ。今いる場所が家に近い場合は帰宅し、会社に近い場合は会社へ向かう。家からも会社からも20キロ以上離れている場合は、近くの一時滞在施設へ向かう。

 ただし、夜間の移動は絶対に避けること。路面状況がわかりづらく、段差でケガを負いやすい。また、雨天にも移動しないほうがいい。寒い冬場に雨で服が濡れてしまうと、低体温症になり命の危険に及ぶ場合もある。

 防災・危機管理アドバイザーで防災システム研究所(東京都)の山村武彦所長(79)は、「巨大地震発生直後に長い距離をむやみに移動することは避けるべき」と話す。

「余震が頻発すると考えられ、壊れかけていた建物の倒壊に巻き込まれたり、ガス爆発のような二次災害に遭ったりする危険性があります。救助活動を妨げないためにも、発生直後は移動を強行せず、帰宅は2~3日待ってからにすべきです」

■どんな施設があるか

 首都直下地震時の帰宅困難者対策のガイドラインには、一斉帰宅を行わないよう呼びかけること、企業は3日分の備蓄を行うことなどが記されている。

 各自治体による帰宅困難者の支援対策も進められている。例えば港区はJR東日本と協定を結び、品川駅、田町駅、浜松町駅、新橋駅の施設内で一時受け入れをして、駅で備蓄している水や食料を提供する。

 発災4日目以降には、コンビニやファミリーレストラン、ガソリンスタンドなど都内1万740カ所(2021年8月末時点)が「災害時帰宅支援ステーション」となり、帰宅困難者に対して水道水やトイレ、災害情報を提供する。

「通勤の電車内で巨大地震が発生して途中駅で降ろされたとしても困らないよう、周辺にどんな施設があるのか見ておくといいでしょう」(山村さん)

 そこで、見てみた。記者の自宅は東京都西東京市にある。地震発生時に新宿にいた場合、自宅までは19キロほど。青梅街道沿いに西へ4時間ほど歩くことになる。その帰宅ルート上には支援ステーションに指定された店舗が多数あり、確認した限り、最長でおよそ700メートルしか離れていなかった。(編集部・藤井直樹)

AERA 2022年6月20日号より抜粋