作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。ゲストは前回に引き続き泉房穂さんです。
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大宮:泉さんはどうして東大に?
泉:私、田舎もんだから、東大って憧れの象徴やったわけ。で、入ってみたらほんま頭悪いしセコい連中ばっかりで。ろくでもないで、ほんま。
大宮:(笑)。
泉:おやじは小卒、おかんも中卒で、親戚中で大学行ったのは私が初めて。自分が勉強して賢くなって強くなって、世の中を良くしようとほんまに思ってたんですよ。きっと東大に行ったら、賢い人がおるだろうとか、同じ志の仲間が見つかるだろうと思って。うちは金もなくて、塾行っとらんし、過去問も買えなかったけど。
大宮:私も東大って、官僚になる方も多いので、日本のために!みたいな方が多くいるのかなぁと思っていました。まあ、私は世代もちがうし、理系ですけれど。それで入ってみたらどうでした?
泉:入ってみたら(親の年収が)1千万、2千万円選手のお嬢さんとお坊ちゃんたちばかり。いわゆるエリート人生をこれからも、って感じのヤツがほとんどだった。
大宮:そうなんですか。苦学生も多いのかなと思ってましたが……。
泉:私は駒場寮に入って。大学に入った瞬間から、二つの世界があると思いましたね。ザ・東大の部分と、私が属した駒場寮は全然別世界だった。あるとき寮の6人で飲みに行って誰かが母子家庭の話をしだしたら「俺も、俺も」って言うて。自分だけ両親そろってるのに貧乏やった。
大宮:なるほどねぇ。
泉:駒場寮には、家庭の年収が三、四百万円じゃないと入れないから。なので駒場寮には、ハングリー精神の強いヤツが多くてね。私はそのコンチクショウ根性の塊のような駒場寮で学生運動の中心にいました。
大宮:その頃から今の片鱗(へんりん)が!
泉:はっきり言うと、やっぱり東大が日本を悪くしている。たかだか一大学にすぎない東大の卒業生が、官僚、政治家、マスコミあたりを回してて。自己責任論者が多くて、「自分たちが頑張ったから」と思ってるけど、それはウソ。環境に恵まれてる部分が大きいのに、想像力が欠如している。実社会との乖離(かいり)が激しい。