厳しい環境だった子ども時代から、常に先を見てスポットライトの当たる場所まで歩いてきた(写真/横関一浩)
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 お笑いコンビ「アインシュタイン」の姿をメディアで見ない日はない。ツッコミの河井ゆずるにとって、芸人は憧れだった。3歳で父親が蒸発。家計を支えるためにバイトを掛け持ちして働き、過酷な生活の中で夢見たのが芸人になることだった。常に自分の頭で考え、行動し、人気芸人まで上り詰めた。大事にするのは人間関係。河井の人生を追いかけた。

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 大音量で出囃子(でばやし)が流れ、客席から拍手が起きると河井(かわい)ゆずる(43)と稲田直樹(39)が舞台に走り出てきた。

「どうもー、アインシュタインと申します。よろしくお願いしまーす」

 と河井が元気に挨拶(あいさつ)すると、拍手がひときわ大きくなった。すかさず稲田が客にささやく。

「あんまり(河井を)笑わんといてあげて」

 それを受けて河井が絶妙なタイミングで突っ込んだ。

「笑われてるのはおまえや。なんで笑われてる自覚ないんや」

 7月初め、東京・新宿にある「ルミネtheよしもと」のお笑いライブで、アインシュタインはトップバッターで登場し、早速観客を沸かせていた。

「トップバッターはすべれないんですよ。その公演の空気が決まっちゃうんで。だから、すぐにネタに入らないで、どんなお客さんなのか見てからやるようにしています」

 と河井は言う。ネタ作りは稲田が「種」になる部分を考えてきて、二人で合わせながら組み立てる。それを劇場で磨いていく。同じネタでも体の動きが違ったり、アドリブで盛り上げたり、見る回によって面白さが全然違う。

「そこが劇場のいいところ。お客さんにもそこを見てほしい。お客さんが目の前で笑ってくれる劇場がいちばん楽しいですね」

 コンビ結成から13年。メディアで見ない日はない。M-1グランプリでは準決勝に5回進出した。ラジオ番組のレギュラーを持ち、大阪では1日10回以上ステージに上がる日もある。仕事で全国を飛び回り、東京のタワーマンションの自宅には月の半分もいられない。

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河井にとって芸人になれたことは、特別な思いがある