パリ五輪、4日、競泳女子400メートルメドレーリレー決勝が行われ、日本はアンカーを池江璃花子(24)が務め、3分56秒17の5位でフィニッシュした。池江は競技後、立ちくらみで医務室に運ばれる様子もあったが、「最後こうやってみんなで笑顔で終われた。本当に楽しかった」と振り返った。そんな池江選手の母が語った過去の人気記事を振り返る(「AERA dot.」2021年11月7日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)。
【写真】赤ちゃんでこんなことも!池江選手の才能を引き出した母の秘策とは
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白血病を克服して東京五輪出場を果たした競泳・池江璃花子選手(21)の母・美由紀さんが五輪後、初めてメディアのインタビューに答えた。池江選手の、しなやかで強い心はどのようにして育まれたのか。困難にぶちあたってもあきらめない子どもを育てる方法とは――。親として大事にしてきたことを聞いた。
――美由紀さんは30年近く幼児教室を経営されてきました。そこで約2千人の子どもたちを教えてきた成果が、璃花子さんの「あきらめない心」となって結実したのですね。今回、初の著書『あきらめない「強い心」をもつために』(アスコム)を出版され、その詳細をまとめられています。
育児って正解があるわけではありませんし、誰しも親になるための教育を受けてきたわけではありません。私も子どもが小さい頃は、このやり方でいいのかなと不安もありました。30年近く幼児教室をやってきた中で、次女の璃花子や長女、長男、そして幼児教室の生徒さんが成長し、自分の決めた道を歩き、充実した毎日を送っている姿を見て、信じてやってきてよかったと思えるようになりました。出版のお話は2018年にいただき、執筆を進めていたのですが、翌年に璃花子が病気になり、発刊を出版社さんに待っていただきました。私の生活も少し落ち着いてきたので、執筆を再び進めました。子育てに不安を抱えるみなさんの道しるべになれるんじゃないかと思い、本にまとめることにしたのです。
――子どもたちに一番身につけてもらいたいと思っていることは何ですか。
一番は「人に愛される人」になってほしいと思って育ててきました。幼児教室でも親御さんには「かわいげのある子に育てなきゃだめよ」と伝えています。勉強やスポーツで1番を目指すのはいいことですが、最も大切なのは子どもが幸せになることです。たとえ1番になれなくても、たくさんの人に愛され、必要とされることが幸せだと私は思います。
私が子どもたちにスポーツをさせたのも、そうした人間力を育んでほしいと思ったからです。さまざまな人と関わり、目標に向かって努力することをスポーツを通して経験してほしい。ほかの子よりもタイムがいいからといって自慢したり、偉そうな態度を取ったりするようなことがあれば、いつでも水泳をやめさせると、子どもたちには言っていました。(スイミングスクールで)璃花子が選手コースに入ったからといって、一式ユニホームをそろえることはせず、水着やゴーグルは姉や兄のおさがりを使わせてきました。