コロナ禍のため、直接の取材は叶わなかったものの、AERA dot.の取材に藤城さんはこうコメントを寄せた。
「ぼくにとって教文館とは、自分の手の中で、自分の思い通りの展示ができる貴重な場所でありました。また、今のコロナ禍で描きたい、描くべきだと思ったのが新作『ノアの箱舟』です。97歳になった今、ぼくにこの難局のなかでどれだけの力が、緊張感や壮大さが出せるかたしかめてみようと思いました」
新作の影絵のみならず、コロナ禍ではアクリル板に動物を描いた新しいスタイルの作品も誕生した。藤城さんは「透明なままではつまらない」「その場を少しでも楽しい気分にさせたい」と思い立って、描いたという。
教文館の渡部社長は、20年間の軌跡を振り返る。
「展示会をはじめた当初は、藤城先生のメルヘンな世界を好む年代の高い人のファンがよく来場していましたが、後半の10年間は若い人がずいぶん来られるようになっていました。藤城先生の作風がメルヘンを残しつつ、戦争や原爆ドームなどの社会的な問題を意識して作品に取り入れるように変化した時期だったと思います。その一方で、時代の変化に伴い、絶えず新たな試みをなさってきたと思います」
「藤城清治 こびとといっしょ 生きるよろこび展2021」は、東京・銀座の教文館で9月26日まで開催。なお、藤城清治さんの影絵展は、今後も各地で開催する予定でいる。
(編集部注・情報は記事の掲載当時のものです)
(AERA dot.編集部・岩下明日香)