1951年3月に横浜市保土ケ谷区で生まれ、父母と姉2人の5人家族。バスケットボールは中学校で始め、県大会で2度優勝。市立桜丘高校の3年生のときは、福井国体の神奈川県選抜チームで「団体・高校」で優勝した。そんな戦績からか、明大バスケットボール部で1年生早々に、学年のまとめ役に指名される。部の伝統的なリーダー養成法だ。4年生で主将になると、大学から少し離れた合宿所に集まって連日、小ぶりのミーティングを重ねる。「全員に、直に」が始まった。

 高槻を訪ねる2週間前、『源流Again』で東京都杉並区の明大和泉キャンパスも再訪した。練習を繰り返した体育館の前で、甦る。強豪チームに求められる「スピード」、得点を増して失点を防ぐ「スキル」、科学的なデータ分析をもたらす「サイエンス」を、英単語の頭文字から「3S」と呼び、主将になると勝利を目指す「スピリッツ」を加えて「4S」とした。

気晴らしの麻雀で門限に遅れた部員を合宿所の前で諭す

「スピリッツ」を高く維持するために必要なのが、規律だ。対外試合の後、気晴らしに麻雀荘へいった部員たちが門限までに帰ってこないと、合宿所の前で待ち構える。規律は全員の心構えを揃えるのに大切だと諭し、叱った。これも、その場で当事者の「全員に、直に」だ。

 キャンパスには部のOB会でくるし、練習ものぞく。当時の建物は、残っていない。広くなった体育館へ再訪で入り、シュートをしてみた。投げる前に、ボールをいくつかドリブルをして、弾力を確かめて選ぶ。さすが全日本大学選手権で3連覇を果たしたチームの選手だ。

 営業改革の集大成が、松坂屋との合併前に手がけた03年3月の札幌店の開業だ。従来のやり方なら総勢900人近く必要だった売り場を、社員242人、パート236人とアルバイトで運営し、初年度から黒字。「新・百貨店モデル」と呼ばれ、業界を驚かせた。でも、銀座は特別な地域で、そのモデルの延長では続かない、と断定する。だから、「GINZA SIX」で思い切った跳躍をした。

 JFRの社長から取締役会議長になり、この5月に顧問へ退いた。でも、バスケットボールに比べれば、ビジネスでの跳躍力は衰えていない。求められれば、高槻で果たした「伝道師」の役は、まだできる。『源流』からの流れは、まだ海にたどり着く前で、終わっていない。(ジャーナリスト・街風隆雄)

AERA 2024年8月5日号

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