スポーツに必要なのはスピード、スキル、サイエンスの「3S」。科学的な分析は必須。さらにスピリッツで、勝つには「4S」だ。経営でも同じ、と思う(写真/狩野喜彦)
この記事の写真をすべて見る

 日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。AERA2024年 8月5日号より。

【写真】この記事の写真をもっと見る

*  *  *

 1998年2月、大丸(現・大丸松坂屋)の奥田務社長に呼ばれ、百貨店業務本部の営業改革推進室部長への異動を告げられた。前年3月に「営業の企画の仕事が長くなったな。一度、商品の営業現場をやってこい」と言われ、JR大阪駅に隣接する大丸梅田店で婦人雑貨子供服部長を務めてきた。それを1年で終えるのか、と怪訝に思ったが、続く言葉を聞いて、頷く。

「営業改革をやれ。最大の顧客満足を最少のコストで実現するため、すべての業務を見直せ。3カ月で計画をつくり、5月中旬に店長会議があるから、そこへ出せ。後はお前に任せる」

 まさに自分が感じてきた「百貨店の課題」だ。消費者ニーズの多様化と百貨店離れの兆候、数年後に始まる人口減少。「このままでは百貨店は生き残れない」との危機感も、同じだ。

 すぐに「営業改革」に着手する。売り場には難しい職務もあるが、単純業務もたくさんあるのに、両方を一緒にして「従業員は何人要る」とはじかれて、大きな無駄があった。しかも、すべての客が店員との対面売買を求めている時代ではない。みれば、専門的な接客が大事な売り場と、接客をしなくても客が欲しい品を手に真っ直ぐレジへいく売り場がある。これらの要素から売り場と仕入れを18の類型にまとめ、それぞれ必要な人数を出した。

勘と経験と度胸古い「KKD」をABC調査で一新

 ただ、長い間、勘と経験と度胸、そのローマ字表記の頭文字を取って「KKD」と呼ぶものに依存してきた店員らは、人を減らすことに「KKDが失われる」と抵抗する。そこで納得させるデータを集めるため、部課長、売り場リーダー、販売員らの全員に、1日に使っている時間をアンケート調査した。

「あなたは何時に出勤し、最初にやることは何ですか?」「それを何分やりましたか?」「接客は何時間しましたか?」「会議は何分ありましたか?」という具合に1日の接客、食事、会議などの時間を1カ月分、出してもらう。部課長など職務ごとに集計し、人数と時間に職務の時間当たり賃金を掛けて、収益とコストを比較した。ABC調査と呼ぶ手法で、ABCは「Activity Based Costing」の略だ。

暮らしとモノ班 for promotion
チャンスは8月10日まで!Amazon「夏本番!家電・レジャー用品等のサマーセール」でお家暮らしをもっと楽しく♡
次のページ