会見で一礼する兵庫県の斎藤元彦知事=2024年7月16日、神戸市中央区
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 兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラなどで内部告発された。これは兵庫県だけの問題なのか。自治体首長のハラスメントが相次いで報じられている。いま、日本の地方自治体はどうなっているのか。神戸大学教授・砂原庸介氏に話を聞いた。AERA 2024年8月5日号より。

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いま問題になっている斎藤元彦兵庫県知事ですが、これまで宮城県や大阪府で財政課長を経験しているので、行政手続きや議会対応は熟知しているはずです。何もわからないから無茶をしているようなことはなく、むしろ問題は県庁の内外で組織的に知事や市長を支援する体制がほとんどないことです。

 知事や市長の候補者選定プロセスが、その場しのぎで毎回のように変わることに問題があります。新しい人を選ぶとき、多くの有権者からすれば知らないところから候補者が連れてこられ、国政では対立している政党の間で勝手に相乗りが始まる。対抗するのは勝ち目の薄い共産党くらい。あるいは、自民党が分裂し派閥抗争のような形で候補者が出て、そこに自分は無党派だと名乗る人がホットなトピックを掲げて立候補することがある。一定のパターンはあるけど、それを有権者が選べるわけではありません。

選択肢なく現職に投票 選挙への関心も下がる

 選挙によって対立の構図がいちいち変わると、どのような資質や実績を持った候補者なのか、その都度判断しなくてはいけない。しかし、それは難しいことです。現状が好ましいと思わなくとも、他に選択肢がなければ現職や後継者に投票せざるをえない。それが嫌で共産党に入れる人もいますが、決して多くはない。そうなると選挙に対する関心も下がります。

 そこには、地方で知事や市長を支持する、持続的かつ一定の求心力を持つ政党がないという問題があります。その重要な原因の一つは議会の選挙制度です。現行制度では、票が個人単位なので、同じような考えを持つ人たちがライバル関係になってしまいます。仮に同じ政党から「子育て支援」を掲げる候補者が2人出たら、有権者から見ると2人はとても似ていて、票を取り合うライバルになる。似ている人との間でこそ違いを強調しないといけない。そうすると政党としてまとまるのは難しくなるのです。

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