砂原庸介さん(すなはら・ようすけ)/1978年大阪府生まれ。神戸大学教授。専門は地方政治、都市・住宅政策。著書に『大阪』『民主主義の条件』『分裂と統合の日本政治』ほか

 個人として選ばれる議員が、誰を代表しているかも考えるべきです。極端な例ですが、人口約90万人の東京都世田谷区区議の定数は50人で、当選に必要な票数は4千未満です。有権者比でも0.5%にも満たない票数で当選する。そうすると世田谷の有権者のうち、20万~30万人が望むことよりも、3千人をいかに3500人に増やすかを多くの候補者は考えざるをえなくなるわけです。

 私自身は、比例代表に近い制度が良いと考えています。参議院選挙のように候補者の名前を書くことができる比例代表です。今と同様に有権者は名前を書き、あとで政党単位の票で議席を割り振る「非拘束名簿式比例代表」がベターだと思います。世田谷の例でも、四つか五つのグループに分かれて政党単位で票を集めるのであれば、せめて10万人のことを考えることを優先するのではないでしょうか。

 総務省も地方レベルの選挙制度改革の議論を5、6年ぐらい前にやりましたが、議員の側が望まない。選ばれる人たちが自分たちの選び方を決めているような状態ですから、なかなか進みません。地方分権を進めて、自治体がより重要な決定を行うとすれば、そのための民意をどう集めるのか。そういう観点から議論が必要だと思います。

(構成/ライター・本山謙二)

AERA 2024年8月5日号

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