フジテレビは今回の『FNS27時間テレビ』で、この火種を燃え上がらせることに成功した。出演者もスタッフも熱く仕事に向き合うことで、あの頃のフジテレビのような熱狂が生まれた。

 昨年の『FNS27時間テレビ』は、千鳥、かまいたち、ダイアンという今をときめく実力派芸人をメインMCに据えて、フジテレビが「笑い」という原点に回帰するような内容だった。

 今年はそれをさらに発展させて、笑いや感動を生む源泉となる「熱」を取りに行った。かつてのフジテレビでは、スタジオの熱を視聴者に分け与えるような番組作りが行われていた。今よりもテレビに権威があり、芸能界に夢があった時代には、そのやり方が通用していた。

霜降り粗品はヒールキャラに

 今年の『FNS27時間テレビ』では、子どもや若者を積極的に企画に参加させることで、視聴者の目線に立ち、視聴者と出演者が一丸となって熱を生み出していった。霜降り明星、チョコレートプラネット、ハナコという比較的若い世代の芸人がメインMCを務め、若者の兄貴分のような役割をまっとうした。

 番組全体を通して、MCの1人である霜降り明星の粗品がヒールキャラとして場をかき乱すような言動を繰り返していたのも、一種のスパイスとして機能していた。

 お笑い界の帝王が裁判沙汰で活動休止に入っていて、もう1人の帝王である明石家さんまも番組内で「俺たちは『古いカギ』やで」と自虐的なコメントをした。

 そんなふうにお笑い界で世代交代の機運が高まっている中で、フレッシュな顔ぶれの芸人たちが大舞台で見事に結果を残した。新しいカギが新しい時代の扉を開く音が聞こえた。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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