この春の浦添キャンプで取り組み始めた頃は「ずっとイマイチで、正直使えるかどうか怪しいなっていうレベルだった」というフォークボールは、チームの先輩であり、自主トレ仲間でもある星知弥にアドバイスを仰ぎながら、今では「めちゃくちゃいいですよ。勝負球でも全然使えるなというイメージがある」と言うほどになった。新たな球種だけではない。シーズンに入ってもプレートを踏む位置を変えるなど、常に進化を追い求めている。

「基本的には左バッターに投げさせようとは思ってるんですけど、代打で(右バッターが)来ることももちろんありますし、右バッターでもしっかり抑えられる球種を持っている。今は本当に自信を持ってマウンドに上がれてるんじゃないかなと思いますね。非常に大きな存在だと思います」

 ヤクルトの高津臣吾監督がそう評するように、今シーズンの山本は左打者(被打率.172)のみならず右打者も被打率.171とよく抑えている。それでも本人の目標は、何といっても「相手の左バッターに嫌われる」こと。球界屈指の「左キラー」である高梨雄平(巨人)のような存在になりたいという。

「左バッターが(打席に)立ったときに『山本、ホント嫌だわ』って思ってもらえるのが僕にとっては最高の状態なので。やっぱり『嫌だな』って思ってもらえないと簡単に踏み込んで来られるんで、最初の頃よりかは全然、今の方が嫌がられてる感じはありますけど、もっともっと嫌われたいですね。高梨さんとか出てきたら(左)バッターは嫌じゃないですか? あれぐらい嫌われたいなっていう」

 昨シーズン記録したキャリアハイの登板数「42」まであと7試合。「もともとケガをしない身体というか、丈夫なのが取り柄なんで。いくら肩をつくっても別にそこは何ともないですし、もちろん疲労はありますけど、だからといって僕はガタガタってなるタイプじゃない。こういう身体で良かったです」と語るタフなサウスポーの存在は、明日から始まる後半戦で巻き返しを狙うチームにとって実に心強い。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。

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