「あれだけ投げさせてもらえた、投げれたっていうのは自分が野球選手としてレベルアップする上で、かなり大きな経験値を得た1年だったと思います。もちろん良いことばかりじゃなかったですけど、良いも悪いもいろんな経験ができたことは今年に生かせてるのかなっていう気がします」

 昨シーズンは33セーブ(リーグ2位)の田口麗斗や、ソフトバンクから移籍してきた嘉弥真新也といった左ピッチャーの状態がなかなか上がらず、今季はブルペンでも数少ないサウスポーとしてピンチの場面で左打者を迎えたところで起用されることも多い。自らを「緊張しい」と言う山本だが、昨年の経験に基づいた準備や心構えでこうした窮地をしのいでいる。

「だいたい僕は試合前からイメージするんですよ。(相手のラインナップの)左バッターが並んでるところを見て『(出番は)ここかな?』って。その時の状況もワンアウト一、二塁とかワンアウト満塁とか、割と絶体絶命の状況をイメージして試合に入って行くんですけど、実際に(マウンドに)行った時にそのとおりだったらイメージどおりだし、それよりもランナーが少なかったらちょっと気持ち的に楽じゃないですか?(笑)そこは今年に入ってから、けっこう試行錯誤した上で成功例が増えてきてるんで、自信を持ってやれてるっていうのがあります」

 昨年は「一生懸命投げることだけを考えてマウンドに上がっている」と話していたこともあるが、今シーズンは特にピンチの場面などでは状況をしっかり整理した上で、打者に対峙している。その状況で何がダメで、どこまでならOKなのか──冷静にそこを見極めている。

「ビタビタにコースに投げて見逃し三振や空振り三振、ゲッツーを取るっていうのが100点だとしたら、一番やっちゃいけないのは何かなって考えて。(展開によっては)1球のミスで終わってしまうこともあるんで、そういう時は甘くなって打たれるくらいならボールでもいいかなっていう気持ちでいるし、たとえば一、二塁だったらまだ三塁ベースが空いてるなって考えることもあります。もちろん100点を目指してやるのが大前提なんですけど、(リードしている展開なら)勝ち越されるのが一番良くないので同点まではOKとか、点を取られてもまだ(勝つ)チャンスがあるっていう状況に、なるべく持っていけるようにしてます」

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「もっともっと嫌われたいですね」