安芸高田市民とは「対話」ができていたのか

「安芸高田市から来た」は恥ずかしい

 その女性市議は、石丸氏の“恫喝発言”で名誉を傷つけられたなどとして、損害賠償を求める訴訟を起こしている。今月3日の控訴審判決では、一審同様、石丸氏の主張は真実と認められないとして名誉毀損(きそん)が認定されたが、今も市議の自宅には中傷の電話がかかってきていて、深夜に10回以上立て続けに着信がある日もあるという。

 市長VS市議会の争いの様子が日本中に拡散され、世間の関心を集めることとなった安芸高田市。市民はその状況をどう感じていたのだろうか。Aさんとは別の現職市議・Bさんはこう話す。

「市外や県外の人に『安芸高田市から来た』と言うと、『大変ですね』と笑われるという訴えはよく聞きましたよ。恥ずかしいから、『(安芸高田市の隣の)三次市から来ました』なんて偽る人までいたし。石丸さんは『自分は市民に選ばれたからここにいる』と言っていたけど、自分の評価ばかりに夢中になって、市民の思いには気づかなかったんだろうね」

 今月7日、石丸氏が任期満了目前で市長を辞任したことで行われた安芸高田市長選で、石丸市政を「市議会や市民との対話が少ない」として刷新を訴えた新顔候補が当選したのは、Bさんの言葉の証左と言えるかもしれない。

 とはいえ、新天地を求めて都知事選に立候補した石丸氏は、結果的に165万8363票を獲得し、現職・小池百合子氏に次ぐ2位におどり出た。掲げた旗印は、「政治屋一掃」。安芸高田市長時代に市議たちとの対決で人気を集めたように、既存の政治家と徹底抗戦する姿勢が共感を呼んだ。

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良い意味での「ギャップ」が働いた