

(前号からの続き)ということで
「もうドンパチ映画は見ないぞ、今年こそ!」
「じゃあ、なにを見るの?」
「はい、音楽映画であればどのジャンルのものでもできるだけたくさん」と答えることにしている。
昨年も『セッション』(音楽を描くふりして実はホラー映画じゃん(^_^;)
『はじまりのうた』(ストリートのバンド演奏で、生楽器をブームのマイク1本で録音だと!? ツッコミどころ満載だけど憎めない小品)
『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男』(“黒人ミュージシャンがありあまる才能で成功、が裏では、いつも家族との葛藤”もうなんども同様の展開の映画を見た気がする。このワンパターンだがよしとしよう)
『スライ・ストーン』(こちらドキュメンタリーだけど、まあJBに同じ)
『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(ブライアン・ウイルソン万歳映画。が、私のように『ペット・サウンズ』信奉者にとっては、そのレコーディング風景の描写がたまらんバイ)等、見ました。
こうやって短く寸評するとぜんぜん「ほめちぎっ」ていないように見えるかもしれませんが、そんなことはありません! 音楽映画を見ている時間はいつも至福の時間。カッコイイ音楽、美しい音楽に浸っているとドーパミンも涙も出まくり間違いなし。はい、ただでさえこの世知辛い世の中。これからはドンパチものはやめて、音楽もので憩いの一時を(っておまえ、どこのまわしもんなん?(^_^; まわしもんちゃいますが、とにかく上記の映画はすべてオススメでございます(^o^))
そして今回ご紹介する映画『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る』も、文句なしにすばらしいロードミュージック(旅する音楽)ムービーです。タイトルにだまされてはいけません! 私がまず力説したいのは、クラシック音楽ファンじゃない人にこそ、ぜひ見てほしいということ。この映画、単なる楽団とそのメンバー&名曲名演紹介映画ではないです「世界中を演奏旅行していたら、なんや、いろんな国でいろんな人に出会っちゃったもんね、知っとう? それこそが音楽家として生きる醍醐味なんやで」という映画。普通、音楽のドキュメンタリーものって「名演奏~インタビュー~昔の写真インサート」みたいなパターンで進んでいくことが多いので必ずどこかで飽きてくるのですが、この作品は意外な展開が続き退屈させない。オケの演奏から、ブエノスアイレスのタクシー運ちゃんのひとりごとにすーっととんでみたり、南アの空港を降りたらいきなり、地元の学生のスチールドラムバンドの歓迎演奏を受けて交流したり、という不思議な流れで全編を通してノリノリで見ていられるので、ご安心ください。集中力とぎれません!
映画の作り手の独り合点な“蘊蓄”には少々閉口することもありますが、この映画、楽団員が語る「ある1曲に対する愛にあふれる情熱的な蘊蓄」が満載。私は、まだ自分が聴いていない音楽を人が熱く「ほめちぎる」のをきくのが大好きです。すぐにでもレコード屋さんに走りたくなってしまう(昔ならね。今ではYOU TUBEに走る。。。ダサいなあ(^_^;))。だから冒頭の1音しか叩かない交響曲について語る打楽器奏者の話から、飲みながら語り合う二人の木管楽器奏者が「サッカーから民俗音楽」に話がとまらなくなっていくのも、全編を通して、様々な団員が様々に語る場面にはすべてワクワクした。「アムステルダムの運河に捧ぐ」という有名曲は知らなかったし、リクエストに応えてのフルートのソロから、実際のアムスでの屋外ライブにワープしての群衆の大合唱には泣けてきた。
さて、ここまで「ほめちぎっ」たので、邦題のつけ方に苦言。これでいいのかなあ? もちろん山本直純さん司会の伝説的な名番組『オーケストラがやって来た』を意識した(パクリかオマージュかは「ほめちぎ第39回」を参照してください)のだと思いますが、映画の原題をそのまま訳すと「50回のコンサートで世界一周」。う~ん、しゃれてるじゃあないですか! もちろん「80日間世界一周」へのオマージュ。クラシックのオケを描いていても、実はクラシック音楽についての蘊蓄映画ではないからこそ、もうひとひねりほしかった気もします。でもまあ、タイトルってつけるの難しいんだよなあ。言うは易く行うは難し、ですよね? [次回2/15(月)更新予定]

