受験を決意すると、すぐに上司や担当番組の関係者へ相談した。社会人が通いやすい平日の夜間と土曜に開講する2年制のコースだったが、夜の番組への出演を調整する必要があった。
「ありがたいことに会社は快く背中を押してくれました。そんな環境が整っていたことは幸運なことでした」
実際に入学すると、毎日のように出される課題や研究のことばかりを考える日々を送った。
「でも、やってみれば意外となんとかなるものです。仕事との両立で大学院への進学を迷う方も多いと思いますが、授業料を振り込んでしまえばもう覚悟が決まります(笑)」
スポーツやバラエティ、ニュース分野を担当してきた出水さんは、なぜ経営・経済を学ぼうと思ったのだろうか。
「担当する機会の多い政治のニュースと違い、経済関連の話題に苦手意識がありました。そして純粋にビジネスというジャンルに興味を持っていました」
ニュース原稿は放送ギリギリに完成することも多く、自分の知識が原稿の理解度に直結するという。
「テレビは映像やテロップが情報を補ってくれますが、ラジオなど声だけで伝えるときは、その人の引き出しの深さが如実にわかってしまいます。さまざまなことを学ばないと、どこかでメッキが剝がれてしまうという危機感がありました」
出水さんが通ったコースでは、1年目は主にマーケティングや財務会計などの基礎を学び、2年目で興味がある分野を深掘りしながら、ゼミで修士論文に取り組む。特に印象深かったのは、履修生がレポートを発表し合うマーケティングの授業。各々が注目する製品やアプリ、人物や新商品のキャンペーンなどを分析し合うなかで、その切り口の多彩さに圧倒されたという。自らも独自性を打ち出そうと模索し、担当していた番組「世界ふしぎ発見!」で共演した黒柳徹子さんを、マーケティングの視点から分析した。「トレードマークの〝玉ねぎヘア〞というアイコンを確立された点などを論じましたが、出来はイマイチ。私の力不足でした」と悔しそうな表情を見せる。
英語で開講される授業で、外国人学生たちへ日本の回転寿司業界を分析して発表もした。
「授業を通じて異文化交流ができたのも面白かったです。学びを通して世界と繋がれるという楽しさがありました」