ミッツ・マングローブ
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの連載「今週のお務め」。36回目のテーマは「最強の『女子供』」について。

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 先の東京都知事選に立候補して落選し、にわかに時の人となっている石丸伸二氏。今や政治なんてものは、「切り取られた言葉」の流感的現象でしかありません。そこを逆手に取って、存在感の拡大を狙ったのであれば、氏の思惑は概ね成功と言えるでしょう。

「石丸構文」「石丸語録」などと呼ばれている氏の発言の中でも、特に議論の的となっているのが、「女子供」という表現です。事の発端は、投開票日当日の夜に放送された「選挙特番」でした。

 氏への質問をしたタレントの山崎怜奈さんへの手厳しい対応がまず話題となり、その件を後日放送のテレビ番組で振り返った際に、「女子供に容赦をするっていうのは優しさじゃないと思っている。もうちょっと優しく言ってあげればよかったのかな」と発言したことから、すわ「女性蔑視だ!」との声が各所から上がっているというわけです。

「言葉狩り全盛」の今のご時世において、わざわざ「女子供」なんて言葉を口にするなど、よほど確信的に地雷を踏みに行かない限りあり得ない行動です。これもまた氏の戦術・思惑通りのような気がしてなりません。むしろ、マイナスからの「実はやさしくて良い人」へのギャップ好感度を狙っているのでしょう。

 一方で、氏の「女子供発言」を非難しながらも、いちいち注釈のように「元乃木坂46の山崎怜奈」と表記するメディアの体質にこそ、石丸氏の言うところの「女子供理論」が根深く流れていると感じるのは私だけでしょうか。「彼女、可愛くて、アイドルなのに、ちゃんと大学も出ていて賢いんです!」的な。
 

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