富野由悠季監督(撮影/河嶌太郎)

僭主政治がはびこっているのでは 

――「ガンダム」の世界観を支えるスペースコロニーは、元々は人口爆発への懸念から1960年代に提唱された構想でした。しかし今では国連の予測でも世界人口は2100年頃にピークを迎え、その後は減少に転じるとの予想です。この時代の変化からも、スペースコロニー構想が立ち消えになっている現状があるように思います。

 その風潮はそれなりにあるような気がしています。人口減になることを悪く言う報道もありますが、僕はとても良いことだと思います。われわれ人類は永遠に地球を使っていかなければならないわけですから。人類の数について僕はこの2、30年言い続けていることなのですが、世界人口は明治維新の時代まで落とすしかないと思っています。そのぐらいまで減少すれば、今の科学技術を上乗せしていくことで人類は自給自足でき、食糧問題なども解決するかもしれません。

――今のこの2024年という現代をどう見ますか。

 僭主政治がはびこっているのではないかという懸念を抱いています。今の世界の政治状況を俯瞰すると、古代ギリシアの僭主政に似ているのではないかと指摘する人がいます。古代ギリシアの循環史観によると、「王政」が堕落して「貴族政」となり、それも腐敗して「民主政」になる。民主政はやがて「衆愚政」に陥り、その後に資格もない人間が指導者を名乗る「僭主政」に至るという考え方があります。中西輝政さんという京都大学の名誉教授が文藝春秋に書いた寄稿なのですが、僕はこの解説を読んで目から鱗でした。

 僕が生きた冷戦時代を振り返ると、東西の指導者達が知恵を絞り合って、世界大戦をなんとか回避しようとしていたようにも思います。1962年のキューバ危機がその典型でしょう。今の政治家を見ていると、冷戦時代よりも今の時代のほうがとても酷いと思いませんか。僕は残り少ない人生ですが、今を生きる若い人たちには頑張ってほしいと思います。

*第2回新潟国際アニメーション映画祭にて取材。第3回は、2025年3月15日(土)から6日間の開催を予定している

(構成/ライター・河嶌太郎)

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