「政治とカネ」の疑惑を抱える秋葉賢也復興相を更迭した後、厳しい表情をみせる岸田文雄首相(2022年12月27日、首相官邸)
「政治とカネ」の疑惑を抱える秋葉賢也復興相を更迭した後、厳しい表情をみせる岸田文雄首相(2022年12月27日、首相官邸)
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 年が明けて心機一転。岸田文雄首相もそう考えているところだろう。だが行く先にあるのは茨の道だ。物価高に国民の不満は募り、唐突に打ち出した防衛増税には自民党内からも異論が出る。岸田氏にこの難局が乗り切れるのか、それとも力尽きるのか……。政治ジャーナリストの星浩さんが現状を解説する。

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 この正月、岸田文雄首相は経済界などが主催する会合に次々と出席し、愛嬌を振りまいた。だが多くの出席者の関心は「この政権はいつまで持つのか」。不祥事続きで4人の閣僚が辞任。防衛費増額とその財源をめぐっては与野党から反対論が噴出し、物価高には国民の不満が募る。岸田首相は通常国会、統一地方選、そして経済の再生といったハードルを乗り越えられるのか。力尽きて退陣となれば、政界は大乱の時代に入るだろう。

 岸田首相は5日、経団連の新年パーティーに出席した。「インフレ率を超える賃上げをお願いしたい」と要請。引き続き政権運営を進める決意を示した。

 とはいえ、岸田政権の前途は多難だ。第1のハードルは23日に召集される通常国会。野党は攻勢を強める構えだ。まず、防衛費の増額とその財源。岸田首相は「5年間で43兆円」と明言。それまでの27兆円からの大幅増額で、財源は歳出削減のほか法人税、所得税(復興特別所得税)、たばこ税から1兆円強をひねり出すという。

「歳出削減分は赤字国債減らしに充てるべきだ」「法人税を上げれば、大企業が賃上げに慎重になる」「復興特別所得税の転用だ」など突っ込みどころ満載だ。「防衛費増額を国会で説明する前に訪米してバイデン大統領に伝えるのは国会軽視だ」との批判も出ている。

 第2のハードルが4月の統一地方選。41道府県の議会議員選挙をはじめ多くの自治体で選挙がある。野党の立憲民主党や維新の会が候補者を立てられず、自民党の「不戦勝」となる選挙区もあるが、都市部では苦戦も予想される。安倍晋三元首相の死去に伴う衆院山口4区などの補欠選挙も予定されている。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の癒着に加え、防衛費増額や物価高が自民党への逆風となることは間違いない。

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