■亀裂深まる自民 結束強まる野党

 1989年に消費税を導入した竹下登首相は全国各地で消費税に理解を求めるタウンミーティングを開催。粘り強く説明して関連法の成立にこぎつけた。2005年に郵政民営化を実現した小泉純一郎首相は、竹中平蔵氏を担当閣僚に起用。「広告塔」としてメディアで説明させた。いずれも国民に反対論の多い改革を成し遂げるための知恵だったが、岸田政権にはそんな工夫が見られない。

 増税案への反対が野党だけでなく自民党内でも高まり、統一地方選での敗退で岸田政権が行き詰まった場合、政局のカギを握るのは菅義偉前首相の判断だろう。菅氏は二階俊博元幹事長や森山裕選挙対策委員長らと会合を重ね、中堅・若手議員とも交流して影響力を保っている。菅氏が岸田首相に協力して政権の立て直しに動くのか、それとも河野太郎デジタル相などを擁立して岸田首相に対抗するのか。自民党内の関心を集めている。

 防衛費増額の財源をめぐっては、国会審議の中で岸田首相が「増税」を明確に打ち出さざるを得ない。一方で自民党内では安倍派を中心に増税反対論が強く、菅氏らの動き次第では自民党内の亀裂が深まりそうだ。野党側は政権内の足並みの乱れを突いて、統一地方選での追い風としたい方針だ。岸田首相は自民党内の反対論を抑えつつ野党の攻勢に向き合うという両面作戦を強いられる。野党第1党の立憲は、22年夏に岡田克也幹事長、大串博志選挙対策委員長という軸ができて党内の結束が強まってきた。維新との連携も進み、与野党の対決は激しくなるだろう。安全保障や経済再生など日本が抱える課題はかつてなく重い。課題を解決して岸田政権が立ち直っていくのか、解決できないまま政権が崩壊し、与野党入り乱れての政界再編は動き出すのか。波乱含みの23年政局が幕を開けた。

週刊朝日  2023年1月20日号

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