AERA 2024年7月15日号より

「条件は主に四つあります。まず消費者物価指数が2%超という条件。総務省統計局によると23年の年平均(総合)が20年を100として105.6、前年比3.2%上昇で、これはクリアしています。次に、物価の変動を表す『GDPデフレーター』という指標が前年比プラス。三つ目に、国の経済全体の総需要と供給力の乖離を表す『需給ギャップ』が前年比プラス。四つ目に、1単位のモノを生産するのに必要な賃金を表す『単位労働コスト』が前年比プラス。これらの条件が確実に揃ったら、日本はインフレであると表現されるかもしれません」

 勉強になった。06年に示された条件ではあるが、そのときから「正確には」デフレ脱却をしていない、と。

 とはいえ「現実的には」インフレ状態にあるわけで、モノの値上がりはこれからも続くだろう。円安傾向も続くのだろうか。

金利上昇メリットは小

 森永さんは「個人的観測ですが」と前置きして、こう言う。

「目先、これ以上の円安になる可能性は低いと思います。対ドル円相場は米国と日本の金利差に連動する形で動いています。金利差が縮小すれば円高に動くことが多いわけです。では金利はどうなるか。日銀が植田和男総裁になってから、金利は上昇傾向にあります」

 なお森永さんは、金利を上げることに関して消極的だ。

「GDPの中身を見ると、個人消費が4四半期連続でマイナスです。これは08年のリーマン・ショック以来。皆がモノを買わなくなっているわけです。さらに実質賃金は25カ月連続マイナス。そんな中で金利が上がると、たとえば変動金利で住宅ローンを組んでいる人は将来的に返済の負担が増します。これから固定金利で組む人も、現状よりも割高な水準になってしまう。『金利が上がるといいこともある、預金も増えやすいし』という意見もありますが、現役世代で金利上昇により暮らしが潤うほど利子を受け取れる大量の預金を持っている人がそんなにいるのかと(笑)。金利上昇のメリットは、今の大半の日本人には少ない気がしています」

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