母親が働きながら大学院で学んでいると、子どもに「勉強しなさい」と言う必要がなくなったとの声も(写真:iStock / Getty Images Plus)
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 変化の激しい時代。さらなるキャリアアップを、と考える社会人は多いはず。だが、社会人にとって最大の課題は学びの時間の確保だ。どう向き合えばいいのか。AERA 2024年7月8日号より。

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 リカレント教育の専門家、リクルート進学総研の乾喜一郎主任研究員は、「大学院での学びには一つの正解はありません」と話す。安易に答えが出る問題はいまや生成AIに問えば答えてくれる。大学院では情報へのアプローチや論理の構築の仕方をガイドしてもらう、そんな伴走型の指導が主だという。

 そうして学ぼうとする社会人学生に共通するのは、価値創造や社会貢献、利他の意識の高さだと乾さんは指摘する。というのも、社会人が学び直すのは大変で、「自分だけのため」という動機ではなかなかモチベーションを維持できないからだ。とはいえ、社会人にとって最大の課題は学びの時間の確保。だが逆の見方をすれば、これも学びの成果の一つになり得るという。

「大学院をくぐり抜けるとタイムマネジメントのスキルが磨かれます。次から次に出される課題や発表をこなすのに、ちょっとした時間にも優先順位をつける必要があるからです」

 面白いことに大学院などではもともと時間に余裕のある人よりも、「仕事も育児も」といった忙しい人が多いように感じられる、という。そんな中高生の母親が働きながら大学院で学んでいると、子どもに「勉強しなさい」と言う必要がなくなったとの声も聞く。

「子どもから見れば、お母さんも頑張っているし、充実しているみたいだから、自分も一緒に勉強しようという気になるようです」

 これから学びたいと考えている社会人に、乾さんはこんな言葉を贈る。

「何より貴重な『自分の時間』を使うのですから、ワクワクできる楽しいことを見つけるのが基本。大学院という社会の資源、ぜひ活用してみてください」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2024年7月8日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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