中学受験は成長する機会にもなる一方で、燃え尽きてしまう子もいる。子どもの心身が壊れる前に親側の意識改革が必要だ(写真:Getty Images)
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 過度な勉強によるストレスは中学受験の期間だけではない。たとえ志望校の合格を勝ち取ったとしても、不登校になる子もいる。AERA 2024年7月1日号より。

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 中学受験後のメンタル不調は、志望校合格をつかんだ子どもにとっても人ごとではない。都内の中高一貫校に通う男子生徒(14)は志望校に入学した数カ月後、不登校になった。きっかけは風邪をひいて、学校を数日休んだこと。授業スピードが速く、ついていけないと感じて学校に行くのが億劫になった。

「こうしたケースは決して珍しくない」と指摘するのは、不登校の子どもたちの学習支援をする「にしおぎ学院」塾長の田中勢記さんだ。

「中高一貫校の多くは学習速度が速く、学習量も多い。1週間学校を休んだだけでも、机の中がプリントでパンパンになる。言葉は悪いですが、“ブラック企業”のようだと感じる学校もあります」

 たまりにたまったプリントを見て、落ちこぼれるのではないかと不安になる。学校から足が遠のき、教室に戻るタイミングを見失ってしまう。不登校になる生徒に共通するのは、「波に乗れなかった」ことだという。

「中学受験をする生徒は、小学校時代に成績がよく、親や先生から褒められたりする機会が多い。ところが中学に入ると自分と同じくらいの学力の子がそろっていて、そのギャップに戸惑ってしまうんです」

 にしおぎ学院には中高一貫校に通う生徒も多く通塾している。その多くは、自ら塾を見つけ出し、切実な思いで訪ねてくるという。

「いわゆる御三家と呼ばれる学校に通っている子もいます。もともとのポテンシャルが高いので、自分のペースで勉強をするうちに『もう一度頑張ればできるんじゃないか』という気持ちが芽生えてくる。モチベーションがあっても、学び直しのやり方やきっかけがわからず困っているだけなんです」

 卒業生のなかには、国公立大に合格した生徒もいる。だが、すべての生徒がすぐに切り替えられるわけではない。田中さんにもこんな苦い経験がある。

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