AERA 2024年7月1日号より

 谷山さんたちは今、対面とオンラインで年400回程の「出張授業」を行い、いじめの早期発見・早期対応につながる環境づくりも進めている。谷山さんはいじめられている子に「あなたは絶対悪くない」と言い、こう話す。

「あなたを大切に思ってくれる人は必ずいるので、助けてほしい時は我慢せずに相談して、誰かと繋がってほしい。そして、いじめられている子が周りにいたら、その子のためにSOSを出してほしい。いじめに苦しんでいる子が、救われるかもしれません」

 公立中学の元教員で子どもとネットの問題に詳しい兵庫県立大学の竹内和雄教授(生徒指導論)は、「ピア・メディエーション」の必要性を語る。「ピア」は「仲間」「同僚」、「メディエーション」は「調停」「仲裁」という意味。ピア・メディエーションは、子ども同士によるトラブル解決のことで、欧米では多くの学校に導入されている。

「いじめを止めるのには、仲裁者が必要です。それも、自分の立場を守りつつ解決できる『賢い仲裁者』です。大人は『いじめはダメ』と頭ごなしに言うだけで、何の解決にもなりません。そこで、子どもたち自身に解決してもらうのです」(竹内教授)

 賢い仲裁者を育てるには、例えば、A君とB君がボールの取り合いをしている時、別の生徒が互いの言い分を聞きながら仲裁する知識やスキルを学校で学んでいく。そうすれば、いじめに気づいた子どもは「LINEのトラブルをLINEで解決してもよけいトラブルになる。実際に会って話をしないといけない」など、賢い仲裁ができるようになるという。

 その上で竹内教授は、「スマホ文化を構築していくことが重要」と説く。

「スマホが本格的に登場してまだ10年余の歴史しかないため、何歳から使っていいのか何時間使っていいのかなど、私たち社会はまだ正解を持っていません。そこでスマホ文化を子どもと一緒に考え、つくっていく必要があります。それは親であり、教師であり、そして社会全体の責任です」

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年7月1日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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