そして子どものフラストレーションの原因を解消し、自己肯定できるチャンスを増やすことも必要、と言う。
「そのためには、子どもが何かと比較した際、その比較対象を対比的でなく同化的に、つまり自分も同じ人間だと考えるよう伝えることです。そう思えれば、“上”と比較しても気持ちはポジティブに働き自尊心は下がりません。困っている人など“下”に対しては、どうやって助けてあげればいいかという方向に気持ちが向いていきます」
そうした中、子どもたち自らにSOSを出してもらい、いじめをなくそうというアプリが注目されている。
「苦しい時ほど誰にも相談したくなく、いじめに使われるSNSアプリは怖くて開くことができません。また、誰かのいじめに気づいても、次は自分がいじめられると恐れてなかなか止めることができません。そこで専用アプリを使い、匿名で学校の外で、負担なく安心して相談できるようにしました」
と話すのは、いじめ相談アプリ「STANDBY」を開発した、「スタンドバイ」(東京都)代表の谷山大三郎さん(41)。
「賢い仲裁者」育て、子ども同士による解決を
STANDBYの仕組みはこうだ。いじめを受けたり友だちがいじめられているのを目撃した場合、自身のスマホやタブレットにインストールしたアプリ「STANDBY」を立ち上げ「報告・相談」ボタンを押し、メッセージ欄に内容を書き込んで送信するだけ。
SOSの受け手は、研修を積んだ教育委員会の相談員や委託先の外部カウンセラーなど。チャットで直接やり取りすることもでき、必要に応じ学校と連携をして解決に動き出す。現在、全国32の自治体が導入し、約1600の国公私立の小中高生が利用している。
「いじめで苦しむ子をゼロにしたい」
そう話す谷山さんがSTANDBYを開発したのは、小学校5年生のころの原体験がある。「猫背」を理由にクラスメートからいじめられ、親には心配をかけたくないので相談できなかった。そんな時、担任の教員が異変に気づき、クラス会を開いて「人を傷つける行為は絶対に許さない」と言ってくれた。その一言で、いじめはやんだ。