小島秀夫(こじま・ひでお)/1963年、東京都生まれ。ゲームクリエイター、株式会社コジマプロダクション代表。代表作「メタルギア」シリーズや「デス・ストランディング」など国境とジャンルを超えた作品で国際的な評価を受けている(撮影/写真映像部・東川哲也)

小島:わかります。挿絵がたくさん入っているのも良かった。

伊藤:そうそう! 「二十四時間の侵入者」の挿絵は画家の依光隆さんが描いています。ハヤカワ文庫SFの絵はほとんど依光さんが描かれていて、自分が漫画を描く上で相当影響を受けました。当時は児童書の挿絵は、手塚治虫先生のような漫画的にデフォルメされた絵が多かったのですが、依光さんの絵はすごくリアリスティックで色気がありました。登場する少女も大人っぽくって。

謎を残したまま終わる

小島:確かに伊藤さんが描く美少女に通じる部分を感じますね。伊藤さんは漫画を描く時に自分でも「怖いなぁ」って思いながら描いているんですか?

伊藤潤二(いとう・じゅんじ)/1963年、岐阜県生まれ。ホラー漫画家。87年に『富江』でデビュー。以来、200近くの作品を発表。30以上の国と地域で翻訳され、米・アイズナー賞受賞をはじめ世界的な評価を受ける(撮影/写真映像部・東川哲也)

伊藤:いえ、自分の漫画を怖いと思ったことはほぼないですね。心霊的な恐ろしさを感じるのは、つのだじろう先生の作品。「恐怖新聞」とか「亡霊学級」とか。

小島:伊藤さんのホラー漫画は文芸寄りというか、スティーブン・キングに似た味わいがあります。最後に謎を残したまま終わっていく。あの余韻は他の漫画にはなかなかありません。

伊藤:私はほとんど行き当たりばったりなので、アイデアをストーリーに落とし込む段階でどうしても無理が生じるんです。その辻褄を合わせたり、別の要素を入れて問題を解決するみたいなことをネチネチやっていると、偶然おもしろい展開が生まれるというのが、いつものパターンです。

(構成/ライター・澤田憲)

伊藤と小島が影響を受けた作品。伊藤は「秋元文庫のジュブナイル的な要素にも影響を受けた。青春時代の感覚に戻りたくて今も漫画を描いているところもある」と話す(撮影/写真映像部・東川哲也)

AERA 2024年6月10日号より抜粋

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