講義終了後、学生に協力してもらって撮影を行った。取材の現場も学びだ(写真:楠本涼)
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 関西学院大学総合政策学部特別客員教授、小西美穂。日が当たらないことでもテレビなら応援できると思った小西美穂は、大阪の読売テレビに就職。事件や司法を担当した。人一番努力しないと認めてもらえないと、休む間も惜しんで取材。数々のスクープを報じ、話題のドキュメンタリーを作った。異例の出向で日本テレビへ。キャスターとして活躍した後は、50歳で大学院で学び、現在は大学でも教鞭を執る。

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関西学院大学神戸三田キャンパスⅡ号館201教室の前では、学生が長い行列を作っていた。2限の講義「テレビ報道論」が、まもなく始まろうとしているのだ。担当するのは、小西美穂(こにしみほ・55)。広々とした大教室がどんどん埋まっていく。24年度の履修者は396名。他学部からわざわざ聴講に来る学生もいる。小西は、開始時間が迫ると声を張り上げて着席を誘導していった。講義に向かうワクワク感、高揚感が伝わってくる。

「学ぶことの楽しさを、学生に知ってほしいんです。知的好奇心を喚起してあげて、人生の背中を少しでも押してあげたい」

 長くテレビの世界で生きてきたが、52歳でテレビ局を退職。大学で教える仕事をスタートさせた。

「オワコンと呼ばれるテレビが、果たして学生たちからどう見えるのか。とても関心がありました」

 しかし、小西が教壇に立つことになった22年、驚くべき事態が起きた。履修者が810名を数えたのだ。637名定員の大教室に入りきらなかった学生は、別の教室からオンラインでつないで小西の講義を聴くという異例の事態となった。

「うれしかったです。今や誰でも情報発信できる時代。メディアがいかにシビアに丁寧に事実と向き合ってきたか、未来を作る若者に伝えたいという思いがありました。そうしたら彼らは知らなかったと驚いてくれ、メディアに感謝もしてくれて」

 革ジャンに身を包んだ教壇上の小西には、テレビ番組出演時のような温和さはない。スライドを見ながら学生に語りかける表情は厳しい。私語ができる雰囲気はなく、居眠りも許さない。時には後ろの席まで歩いていき、緊張感を高める。関西学院大学総合政策学部長、長峯純一(66)は語る。

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