現在「ハルメク365」の月間PVは約600万PVとされ雑誌同様に伸びてはいるものの、ユーザー自身からコンテンツ料をもらうサブスクモデルには「難しさ」も感じているという。
「ウェブサイトに人を集めて広告で稼ぐやり方は、ともすればユーザーの満足が二の次になりがち。ハルメク365では、質の高いコンテンツでお金をいただけるモデルを作りたいと考えています。ただしテキスト記事だけだと無料が当たり前で難しい。記事を朗読して音声化したり、オンライン講座を開催したり、ユーザー同士のコミュニティーを作ったりと、今は試行錯誤の真っ最中ですね」(同)
編集部とマーケティングチーム、そしてシンクタンクの三つの部門が協力して、読者が求めるものを精査しているという。
この4月からは新たなエキスパートもハルメク365にチーム入りして、ブラッシュアップを進めるようになった。事業本部副本部長の柴田周平さんだ。そもそもはNHKで「プロフェッショナル 仕事の流儀」などの番組作りを担当。その後、アマゾンジャパンでポッドキャストなどの音声コンテンツを手がけてきたプロデューサーとして知られる。
シニア市場の可能性
「ウェブのコンテンツが増えすぎて、最近はウェブ広告が効かなくなりつつあるという声も聞かれます。民放番組のように広告を入れて、その無料広告モデルでやっていくっていうことでウェブメディアは発達してきましたが、そこは曲がり角に来ている」(柴田さん)
ただしシニアのマーケットについては、まだ死角も。
「40代後半から60代前半までの、アクティブシニアの人たちが、どういう消費行動をして、どんな悩みや課題を抱えているかについてはハルメク以外のメディアはフォローしていないといっていい。それだけにこれからのハルメクの可能性は大きいと思っています」(同)
動画もできる、音声も出せる。読者の反応を見るトライ&エラーも瞬時にできる……そうした紙になかったツールを活用しながら、一見形のないデジタル空間にリアルの肉付けをしていけば、「雑誌のように友人がいて、情報があって、講座があってというコミュニティーをウェブで作り上げることはできる。すでに手応えは感じているところです」(同)。
(ライター・福光恵)
※AERA 2024年6月24日号