(写真:同サイトから)
この記事の写真をすべて見る

 出版市場は縮小の一途をたどる中、売れている雑誌がある。シニア向け女性誌「ハルメク」だ。その「ハルメク」が2022年9月から、ウェブメディア「ハルメク365」を立ち上げている。何を目指しているのか。現場の話を聞いた。AERA 2024年6月24日号より。

【図を見る】トップ3はどこ?「出版系自社PV数トップ20」はこちら

*  *  *

「ハルメクおみせ」ジェイアール京都伊勢丹店=2022年2月のオープン時(写真:ハルメクホールディングス提供)

 かつては赤文字系と呼ばれた女性ファッション誌が、100万部超えの快進撃を展開していた女性誌の世界。でも今、一番売れている女性誌といえば、シニア向け女性誌「ハルメク」だ。

 書店に並ばない定期購読の月刊誌ながら、約48万人もの読者数を誇り、女性誌だけでなく、全雑誌(コミック誌除く)のなかでも販売部数ナンバー1として知られる。

 送られてくる雑誌には読者と親和性の高い商品が並ぶ通販カタログも同封されているほか、シニア女性の困りごとに細かく対応した記事で部数を伸ばしてきた。また23年3月には、ハルメクホールディングスが東証グロース市場に上場。公募価格は1720円で初値は1981円となった。

 そんな「ハルメク」が2022年9月から、ウェブメディアを立ち上げている。「ハルメク365」だ。オリジナル動画コンテンツなどが毎日届けられるサブスク会員モデルも追加され、料金は月額780円。雑誌の「ハルメク」を定期購読している読者には、年間1980円になる割引も用意した。

20年後に向けた挑戦

「ハルメク365の始動は、10年後、20年後に向けたチャレンジ」と話すのは、同誌編集長の山岡朝子さんだ。そもそも読者数が多いだけでなく、通販カタログで買い物に繋がったり、イベント参加に繋がったり、リアルな世界とさまざま繋がるところが「ハルメク」の強みのひとつ。

「そうしていわば大きなコミュニティーのようなものを作ってきたのが、『ハルメク』です。とはいえ、じゃあ10年後、20年後にはどうなるんだろうという危機感はあった」

 例えば20年後、今の40歳代が60歳代になった時、今と同じように新聞に載っている「ハルメク」の広告を見て申し込み、毎月紙の雑誌を読むだろうか。

次のページ