「まずは家計簿で、収支を把握してみてください。生活にいくらかかっているかが分かると、漠然とした不安が消えて、必要以上に行動が制限されなくなる。すると旅行や留学など目標ができて、希望が持てます」
そう話すのは、婦人之友社の徳永光子さん。同社は創業者・羽仁もと子氏の家計簿創案から、今年で120年を迎える老舗。徳永さんも数えきれないほどの家計簿の中身を見てきたスペシャリストだ。
「1年間記帳できたら、その収支を元に予算を立てる。予算内の出費なら、安心して払えます。過度な節約で生活の質を落とすのではなく、要るものを不安なく買えるはずです」
アプリで出費を記録
実際に家計簿アプリで、細かく記録している千葉県在住の男性Cさん(47)に、話を聞いた。
「前職も教育関係で、年収は600万円でした。当時の同僚が、将来のお金が不安で、夜眠れなくなると言っていた。僕はそこまでではなくても、子どもの教育費が心配で、365日、常にぜいたくは控えていた」
ところが数年前から、妻と一緒にアプリで出費の費目を細かく記録。以前はエクセルで収支のみつけていたが「総じて生活の中身が見えてなかった。今は調味料費を削って、いい食材を選ぶ。暮らしのお金が可視化されて、家計の不安はゼロに。余裕ができた」と効果を実感する。
今回の取材で家計簿に意欲的だったのは、一人暮らしになった学生や新社会人。そして定年後の暮らしを、リアルに感じるBさんのタイプだ。ただし50代は、家計簿挫折経験があり、再スタートを躊躇している人が多かった。
(ライター・三宮千賀子)
※AERA 2024年6月24日号より抜粋