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 すべては命を救うため──。朝から翌日夕方まで、36時間の連続勤務もざらだった医師たち。2024年4月から「働き方改革」が始まって、2カ月が過ぎた。医療現場で何が起こっているのか。AERA 2024年6月17日号から。

【衝撃のデータ】医師は週に何時間働いている? 働き方改革へのホンネは?

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 5月の平日午後1時、大阪市のJCHO大阪みなと中央病院に、熱っぽいという80代女性が救急車で搬送されてきた。救急外来に60代の男性救急医が走って駆け付けた。

「こんにちは。ここ病院ですよ」

 ストレッチャーの女性に呼びかけ、医師は防護服を着た。

「ここは痛みますか?」と腹部を触診、付き添いから話を聞いた後、ベッドの脇の机に向かい、パソコンのキーボードを叩く。「ピッピッ」という心電図モニターのアラーム音とタイピング音がしばらく響いた。新型コロナウイルス検査など、一定の処置を終えたときは、搬送から1時間近く経っていた。

AERA 2024年6月17日号「医師676人のリアル」特集より

深夜の救急を制限

 医師の仕事は診察以外にも多岐にわたる。PCで打ち込んでいたのは電子カルテで、直前まで医局で事務仕事をしていた。

 当直では朝から夕方まで通常勤務、夕方から翌朝まで当直勤務をして、昼頃に退勤。勤務時間は24時間を超えている。

 だが、この病院は「働き方改革」で以前より負担は軽減したという。別の救急医は言う。

「救急患者が多ければ、休憩する余裕はなくなりますが、夜間は9時間のインターバルを取れるようになりました」

 2024年4月から「医師の働き方改革」が始まり、原則、時間外・休日の労働時間は年間960時間に制限された。年間960時間とは単純計算で月80時間、立派な長時間労働に見える。厚生労働省によると、960時間超働いた勤務医は21.2%。過労死ラインの2倍の年間1920時間を超える勤務医も3.6%いた(22年調べ)。

 以前は、大阪みなと中央病院でも、時間外・休日労働時間が960時間を超えるおそれのある医師が複数いた。

 労働時間の把握から始め、出勤・退勤は以前は紙に手書きで記録する「自己申告」だったが、タイムカードを導入した。

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