自分の戦いをやめない、他人の戦いを止めない伊黒
刀鍛冶の里での戦闘中、恋柱・甘露寺蜜璃の回想に、この伊黒から靴下が贈られるシーンがあった。コミックス14巻124話の扉絵は、蜜璃と伊黒が楽しそうに2人で食事をしている場面が描かれている。これらの様子から、伊黒が蜜璃に対して好意的であることが、すでに予想される。
しかし、柱稽古がはじまっても、伊黒が蜜璃に戦いをやめるように促している様子は一切ない。そして、自分が戦いに向かう中で、当然のように死を覚悟していることも伝わってくる。鬼殺隊の「柱」の全員が、戦いの中で死ぬことをやむなしとし、仲間たちの命が「か弱き一般市民」のためにささげられることにも納得している様子だ。これがいかにも鬼殺隊らしい。
この伊黒小芭内という男は、一貫して、つねに「柱らしい」。自分が好意を持っている人物に対しても、その「戦いへの思い」をむげにすることは決してない。
伊黒の言葉の裏の真意
柱稽古では、伊黒のきつい言葉をたくさん聞くことになるだろう。義勇には「貴様には柱としての自覚が足りぬ」と苦言を呈し、後輩隊士たちには容赦のないシゴキを実施する。あまりの厳しさに、炭治郎が「この…括られている人たちは何か罪を犯しましたか?」と質問するが、伊黒は「弱い罪 覚えない罪 手間を取らせる罪 イラつかせる罪」と答えている。それでも、放っておけば良いのに、伊黒は後輩たちのために、自分の技を教えている。
柱合会議のシーンで、柱と隊士についてこんな説明があった。
<柱より下の階級の者たちは恐ろしい早さで殺されてゆく>(6巻・第45話「鬼殺隊柱合裁判」)
伊黒の日々の厳しい言葉は、鬼との戦いで隊士たちが命を落とさないために発せられる。鬼を倒せるように、彼らが1人でも多く生き残ることができるようにと。
この後、鬼殺隊がさらなる激戦に突入した際に、「柱」と一般隊士たちの実力の違いがはっきりとする。そして、同時に彼らの「絆」も、われわれは目にすることになる。「足手纏いの厄介者 お前はもう引っ込んでいろ」と威圧しながらも、全身を賭して、後輩たちを守る蛇柱・伊黒小芭内の活躍も見られる。
新作アニメ「柱稽古編」では、伊黒小芭内の常人離れした「太刀筋」のすごさも描かれるだろう。今から次回作が待ち遠しい。