20年来の友であるホラー漫画家の伊藤潤二さんとゲームクリエイターの小島秀夫さんが、自らの礎を築いたものと創作の手法について語り合った。AERA 2024年6月10日号より。
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伊藤:小島監督は物語の展開もぱっと出てくるのですか?
小島:僕の場合は、最初にイメージとテーマが並列に出てきます。それを少し時間が経ってから論理的に整理すると、今まで見えなかった接続点や輪郭が見えてきてまとまる瞬間がある。すると世界像が見えてきます。それから頭の中に断片的なシークエンスがいっぱい出てきて、その間を埋めていく感じです。だから話の展開を考えるのは、それほど悩まないですかね。
伊藤:いや、うらやましい。
小島:僕が作るゲームは、自分ではマス向けではないと思ってるんですよ。インタビューでもよく「世界で評価されている理由は何か?」と聞かれるんですけど、はっきり言って謎です。
伊藤:私もよくそう言っていただけるんですけど、自分ではよくわからないんですよね。
小島:少なくとも、日本を舞台に「羅生門」を作るみたいな、ドメスティックな作品は作っていない自覚はあります。一方で、舞台を外国にしても、ゲームを作ってるのはやはり日本人なのでちょっと違和感があると思う。もしかすると、そこが海外の人から見るとオリエンタルに感じられて新しいのかもしれません。
伊藤:私の作品が海外でも読まれるようになったのは、小島監督が紹介してくださったおかげだと思っています。
小島:何を言いますか! 日本が舞台で、登場人物も日本人で、日本人の美意識で怖いものを描いてあれだけ海外人気が高いのは、もはや黒澤明の次元ですよ。ただ、まったく新しいものではなく、やっぱりどこかで共感する部分がないと、そこまで売れないとも思いますけどね。
伊藤:それはありますね。
クリエイターは孤独
小島:恐怖は万国共通どころか、すべての人間にある原始的な感情ですし。僕のゲームでは「親子の関係」をよく描くのですが、それも普遍的と言えばそうかもしれません。ただ、「売るために作る」っていうのもちょっと違うんですよね。あくまで作りたいものがあるから作れる。