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また連絡したくなる「感じのいい人」がクロージングで言っていた「ある一言」とは?

 それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。

「大事にされている」という感

 あなたは、商品やサービスを利用した際、どんな体験をしたら「またここを利用しよう」と思うでしょうか。

 商品・サービスのクオリティだけでなく、「いま、大事にされている」と実感する気づかいがあったときではないでしょうか。

 これは、ある魚市場近くの行列ができる寿司店に行ったときのことです。
 やっと席についたところで、なにげなく周囲を見渡すと、私の近くにお好みで注文するお客さんがいることに気がつきました。

 その人が「かっぱ巻き」「卵」に続いて「蒸し海老」と注文をしたところで、職人さんから、

「あれ? お客さん、もしかしたら魚が苦手ですか?」

 という声が聞こえてきました。
 当人でない私も、ドキっとした瞬間でしたが、続いてその職人さんから発せられ言葉は思いがけないものでした。

「そういうお客さん、たくさんいらっしゃるんですよ~。
 よければ、うちのアナゴいかがですか? おいしいですよ~」

 だったのです。

 市場近くのお寿司屋さんに、魚が苦手な人が「たくさん」は来ないと思います。
 職人さんの、魚嫌いのお客さんも大事にする気づかいに、人気店の理由がわかったように思いました。
 そして私まで、お店から「大事にされている感」を味わうことができました。

また連絡が来るクロージングとは?

 サービスのプロからは、学ぶことがたくさんあります。
 ある、インサイドセールス部門の教育を支援していたときも、どんな気づかいがあると、お客様に「大事にされている感」を持っていただけるか、考えあぐねる毎日でした。

 人は、最初と最後の印象が長く残ると言われています。
 成約にはつながらず、相手から「また検討して、ご連絡します」と電話を切られる場面でも、何かできそうです。

 そこで、それまでは、「わかりました。では、またのご連絡をお待ちしております」と締めくくっていたをトークを、

「わかりました。では、ご連絡くださるときは、お名前だけおっしゃっていただけますか。
 すぐ、わかるようにしておきます」

 に変更してみたのです。

 拙著『気づかいの壁』では、気づかいのコツの一つに「記憶」を挙げています。
 担当者がお客様のすべてを記憶はできなくても、システムが憶えておいてくれます。その言い方を少し工夫してみました。

「たったそれだけ?」と思うかもしれません。
 人によって受け取り方も異なります。
 ただ、小さな気づかいの積み重ねが、お客様の「大事にされている感」を満たしていくと信じ、社員の人たちと他にもできることはないかと考えようになりました。
 そのうち、お客様のほうから再びご連絡をくださる頻度が、少しずつ増えていきました。

 あなたは、仕事のどの場面で「大事にされている感」を提供できそうでしょうか。
 最初の一歩を、クロージングの一言から始めてみませんか?

(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が特別に書き下ろしたものです。)