『読むだけでメンタルが強くなっちゃう漢方養生の本』ロン毛メガネ 大和書房
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 2019年からYouTubeで東洋医学や漢方養生に関する情報を発信している、香港出身の「ロン毛メガネ」さん。人からよく「鬼メンタルだね(メンタルが強いね)」と言われるそうですが、本人いわく、それは生まれつきのものではないそうです。過去には、仕事が忙しすぎて心が「無」の状態になってしまったこともあれば、妹を亡くした喪失感からしばらく立ち直れなかったことも......。そうした経験を経ながら、だんだんと今の鬼メンタルへと変わってきたというだけに、「もともとどんな性質や性格の人であっても、考え方や養生次第で、誰でもメンタルは強くなれる」とロン毛メガネさんは言います。

 では、一体どうすれば心が強くなるのでしょうか? それを養生法の観点から解説したのがロン毛メガネさんの著書『読むだけでメンタルが強くなっちゃう漢方養生の本』です。

 ここでひとつ注意したいのが、ロン毛メガネさんの言う「鬼メンタル」とは、何があっても倒れない、鬼のような強さを持つというわけではないこと。心は固くなると、すぐにポキッと折れてしまいます。ロン毛メガネさんが子どもの頃からお父さんに常々言われていたのは「スポンジになりなさい」との言葉だそうです。スポンジは衝撃を受けても簡単には砕けず、逆に衝撃を吸収してダメージをやわらげます。それと同じで、「常に柔らかさ、余裕を持って、物事を考える、受け入れる、そして許すこと」(同書より)。これがロン毛メガネさんの考える本当の「心の強さ」だと記します。

 そうした心の強さを手に入れるために大事なのが、「体のケア」以上に「心のケア」をおこなうこと。東洋医学では、「『体』と『感情、情緒』はつながっている」「病は感情、情緒から生まれる」との考えがあるそうです。「喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」という七情(七つの感情)、そして「肝・心・脾・肺・腎」という五臓がそれぞれ関係しあって、体と心に影響を与え合っています。何か体に不調が出たとき、「食事、生活習慣、情緒、精神状態......など、その人の全体を見て、体質を判断して、見直していく」(同書より)のが東洋医学なのだそうです。

 同書では、心を強く、ラクにするために効果的な食べ物やお茶、ツボなどといった、普段の生活に取り入れられる「ゆる養生」を紹介。さらには、日常でできるメンタルケアや健康法などについても伝えています。

 忙しさや周囲への気遣いなどから、ついつい後回しにしてしまうことも多い自身のケア。「なんだか最近よくイライラしちゃうな」「心が寂しくて憂鬱だな」――そんなときは、同書で心の養生について学んでみるのもよいかもしれません。

[文・鷺ノ宮やよい]